BtoBサイトの改善は、サイトを丸ごと作り直すのではなく、ページを商談に近い順に並べ、1か月に1ページずつ直していく作業です。順番を決めずに気になったところから手を付けると、数字が動かないまま作業だけが積み上がります。
「サイトを改善しよう」と決めたとき、最初に出る案はたいてい「そろそろリニューアルしないか」です。デザインが古い、スマホで見づらい、載っている情報が古い、と不満を並べると作り直したくなります。ただ、作り直しには数か月と数百万円がかかり、公開した後に「問い合わせは前と変わらない」となる会社が珍しくありません。見た目を新しくしても、問い合わせる直前の人が知りたいことが書いていなければ、数字は変わらないからです。
この記事は、リニューアルに踏み切る前に、いまあるサイトをページ単位で直していく手順をまとめたものです。改善とリニューアルの分け方、ページの棚卸し、商談に近いページから直す1周目、比較を助ける2周目、情報を集める人のための3周目、営業の商談記録を生成AIに読ませてサイトの欠けを見つける方法、月1ページの改善計画表の作り方の順に進みます。この記事は問い合わせ改善のハブ記事ホームページの問い合わせを増やす方法|今日直せる10項目の「10項目」を、BtoBのサイト全体に広げて「どのページから、どの順で」に組み替えたものです。1つ1つの直し方は各記事に譲り、この記事では順番と計画に集中します。
改善はリニューアルと分ける
作り直しが要る場合は3つだけ
サイトを丸ごと作り直す必要があるのは、次の3つのどれかに当てはまるときです。
- 更新の仕組みが壊れていて、ページを1枚足すのに制作会社へ依頼が要る
- スマホで表示すると文字が読めない、ボタンが押せないなど、土台の作りが古い
- 事業そのものが変わり、サイトに載っている商材や対象が現実と食い違っている
この3つに当てはまらないなら、いまのサイトのまま直せます。「デザインが古く見える」「情報が足りない」「問い合わせが少ない」は、ページ単位の直しで動く問題です。上位の解説記事が共通して指摘するのもこの点で、才流のBtoBサイト改善の基本的な考え方にあるとおり、改善で先に立つべきは会社の都合ではなく訪問者の視点です。訪問者の視点で見ると、見た目の古さより「知りたいことが書いていない」ほうが問い合わせを止めています。
直す単位はページ1枚
改善の単位をページ1枚にします。「サイト全体のトーンを整える」「全ページのボタンを変える」のような横断の作業は、影響が広い割に、どこが効いたか分からなくなります。1枚のページを直し、そのページに来た人の動きを翌月と比べる。この繰り返しが、少人数で回す会社に合っています。
ページ1枚を直すときの中身は、書き足す、削る、並べ替える、リンクをつなぐ、の4つです。デザインを変えるのは、この4つを終えても見落とされているときだけにします。
順番は商談に近いページから
どのページから直すかは、そのページに来る人が商談にどれだけ近いかで決めます。問い合わせページ、料金ページ、事例ページに来る人は、発注先をほぼ決めています。この人たちは、ページを少し直すだけで問い合わせに進みます。記事ページに来る人はまだ課題を調べている段階で、ページを直しても問い合わせにつながるのは数か月後です。
同じ1か月をかけるなら、動きが早いほうから直します。訪問者の検討段階の分け方と、段階ごとにCVR(問い合わせに進んだ人の割合)の見方を変える考え方は、BtoBサイトのCVR改善|検討段階ごとに打ち手を変える手順にまとめています。この記事はその考え方を「ページの順番」に落としたものです。
先にページを棚卸しする
全ページを4つに分ける
改善を始める前に、サイトにあるページを全部書き出します。会社のサイトなら、多くても数十枚です。書き出したら、それぞれのページを次の4つに分けます。
- 決定のページ:問い合わせ、相談の申し込み、料金、サービスの詳細、事例、会社概要、担当者の紹介
- 比較のページ:トップページ、サービスの一覧、選び方、よくある質問、他社との違い
- 情報のページ:記事、用語の解説、ダウンロード資料の紹介
- その他:採用、お知らせ、プライバシーポリシー、沿革
4つ目は、問い合わせの改善では触りません。直すのは1から3で、順番も1から3です。分けるときに迷うページがあれば、「このページを読み終えた人は、次に何をするか」で判断します。問い合わせに進むなら決定、他のページに移るなら比較か情報です。
GA4とSearch Consoleで数字を添える
書き出したページに、数字を2つ添えます。1つはそのページに来た人の数、もう1つはそのページに来た人のうち問い合わせや資料の受け取りまで進んだ人の割合です。どちらもGA4(Googleアナリティクス4)のランディングページのレポートで出せます。問い合わせの完了をキーイベントとして登録していないと2つ目の数字が出ないので、先に登録します。手順はGoogleのキーイベントを作成または変更するにあります。
Search Console(Googleの検索結果での表示とクリックを見る無料ツール)では、各ページがどの検索語で表示されているかを見ます。料金ページが「◯◯ 料金」で表示されているのに、そこに料金が書いていない、という食い違いがここで見つかります。数字を添える目的は、直す順番の裏付けです。決定のページのなかでも、人は来ているのに進んでいないページが、最初に直すページです。
営業に「よく聞かれること」を聞く
数字と並べて集めるのが、営業担当が商談で聞かれることです。初回の打ち合わせで必ず出る質問、見積もりを出した後に聞かれること、断られたときに言われた理由を、営業担当に10分で挙げてもらいます。書き出したものを1つずつ、「この答えはサイトのどこに書いてあるか」で照らします。
多くの会社で、営業が毎回口で答えていることの半分はサイトに書いていません。「最低の契約期間はあるか」「自社の規模でも頼めるか」「導入までに社内で何を用意するか」といった質問です。この照らし合わせが、棚卸しの中で最も直しに直結します。営業の言葉を生成AIで整理する方法は後の章で扱います。
商談に近いページから直す
問い合わせページと相談の申し込み
1周目は決定のページです。最初に直すのは問い合わせページで、理由は単純で、ここに来る人は全員が問い合わせる気で来ているからです。見るのは、フォームの項目が多すぎないか、送った後に何が起きるかが書いてあるか、電話番号と受付時間が並んでいるか、の3点です。この3点の直し方は問い合わせフォームの改善|離脱を減らす項目設計の手順に1本分にまとめています。
相談の申し込みページが別にあるなら、相談で誰が出てくるか、何分か、相談の後に何が届くかを書きます。「無料相談」の4文字だけでは、決めている人でも手が止まります。
料金とサービスの詳細
次は料金ページとサービスの詳細ページです。ここに来る人が知りたいのは、費用の目安、頼める範囲、かかる期間、頼めない場合、の4つです。「案件により異なります」で済ませているページは、この4つを幅で書くだけで動きます。「月額◯万円から」「小規模なら◯週間」「◯◯には対応していません」の3行があれば、読者は自分で判断できます。
サービスの詳細ページには、営業が商談で使っている説明の順番をそのまま持ち込みます。営業が最初に「どんな会社向けか」を話すなら、ページの最初にもそれを書きます。商談で通じている順番は、ページでも通じます。
事例は同じ規模で探せる形に
事例ページは、決めかけている人が「自社と似た会社が頼んでいるか」を確かめる場所です。事例が3つあるなら、業種、規模、抱えていた悩み、頼んだ範囲、期間、結果の順に揃えて書き直します。1つの事例に派手な数字があるより、揃った形で3つ並んでいるほうが、読者は自社に当てはめられます。
事例が1つも無い会社は、名前を出せない案件でも「業種と規模と悩み」だけの匿名の事例にして載せます。何も無いより、匿名でも揃った形があるほうが決め手になります。
会社概要と担当者の顔
1周目の最後は会社概要と担当者の紹介です。決定のページに来る人は、最後に「誰と仕事をするのか」を確かめます。所在地、設立、人数、代表の名前と経歴、実際に担当する人の顔と名前があるかを見ます。担当者の顔を出せない会社は、担当する役割と経験年数だけでも書きます。
会社概要は、社内では「誰も読まないページ」と思われがちですが、決定の段階の人は必ず見ています。ここまでの4種類のページで1周目が終わります。1周目にかかるのは、1か月に1ページなら4か月です。
比較を助けるページを直す
トップページの最初の画面
2周目は比較のページです。トップページの最初の画面には、会社の理念や挨拶ではなく、「どんな会社の、どんな悩みに、何を提供するか」を1文で書きます。上位の解説記事のほぼすべてがこの点を挙げていて、それだけ多くの会社のトップページが理念から始まっているということです。
最初の画面の下には、決定のページへの入口を置きます。料金、事例、問い合わせの3つです。トップページに来た人の多くは比較の途中で、決定のページに移れるかどうかがここで決まります。ボタンの文言と置く場所は、CTAの改善で問い合わせを増やす|配置と文言を決める手順にあります。
サービスの選び方とよくある質問
サービスが複数ある会社は、「どれを選べばよいか」のページを作ります。会社の規模、悩みの種類、予算のどれかで分けて、それぞれにどのサービスが合うかを書きます。読者に選ばせる前に、選ぶ軸を渡すページです。
よくある質問のページは、営業に聞いた「よく聞かれること」の答えをそのまま置く場所です。棚卸しで見つけた「サイトに書いていない質問」をここに集めると、比較の途中の人が問い合わせずに疑問を解消できます。問い合わせが減るように見えますが、疑問を解消した人だけが問い合わせるので、商談に進む割合は上がります。
他社との違いは向いていない場合で書く
比較のページで最も難しいのが「他社との違い」です。自社に有利な軸だけの比較表は、読者にすぐ見抜かれます。代わりに書くのは、自社が向いている会社と向いていない会社です。「◯◯を求める会社には向いていません」と正直に書くほど、向いている読者の問い合わせは増えます。
他社の名前を出す必要はありません。「大手の制作会社に頼む場合」「社内で作る場合」「自社に頼む場合」のように、選択肢の型で並べれば足ります。
情報を集める人のページを直す
記事と資料は次に読む物でつなぐ
3周目は情報のページです。記事ページに来る人は課題を調べている段階なので、ここに「お問い合わせ」だけを置いても押されません。記事の末尾に置くのは、同じ主題の別の記事、記事の内容を自社で試すためのチェックリスト、もう一段詳しい資料のどれかです。読んだ記事と地続きのものだけが受け取られます。
資料を受け皿にする場合、資料そのものより、記事とのつながりと入力項目の多さで受け取られるかが決まります。この直し方はホワイトペーパーのダウンロードを増やす方法|伸びない段を見つけて直すにあります。
記事から決定のページへの道を引く
情報のページを直す目的は、記事を読んだ人が比較のページ、決定のページへ進める道を引くことです。記事の本文で自社のサービスに関係する話が出た段落の直後に、サービスの詳細ページや事例ページへのリンクを置きます。記事の末尾にまとめて置くより、関係する段落の直後のほうが自然に進めます。
記事を増やすことと、記事から先の道を引くことは別の作業です。記事が何十本あっても、決定のページへの道が無ければ、読まれるだけで終わります。記事を商談につなげる運用の全体はBtoBオウンドメディアの運用|商談につなげる設計と回し方にまとめています。
入口を増やすのは3周目の後
記事を新しく書いて入口を増やすのは、3周目まで終えてからにします。順番を逆にして、受け皿ができる前に記事で人を集めると、来た人が問い合わせに進めず、「人は来ているのに問い合わせが無い」状態になります。この状態の切り分け方はWebサイトの問い合わせが来ない原因|5段で切り分けて直すにあります。
1周目から3周目までを終えると、いま来ている人が問い合わせまで進める道が一通りできています。ここから入口を広げれば、増えた分がそのまま問い合わせに乗ります。
AIで営業の言葉をサイトに移す
商談の記録から聞かれたことを出す
棚卸しの章で、営業に「よく聞かれること」を10分で挙げてもらう方法を書きました。営業担当の記憶に頼ると、印象に残った質問に偏ります。商談のメモや議事録、メールのやり取りが残っているなら、生成AI(ChatGPTやGeminiのような、質問に文章で答えるAI)に読ませて、質問を抜き出させます。
手順は3つです。
- 直近の商談のメモや議事録を、社名や個人名を消してから貼り、「この中で相手が質問したこと、不安に思っていたことを、質問の形で全部挙げてください」と頼む
- 挙がった質問を、「決める前に知りたいこと」「決めた後の進め方のこと」「費用のこと」に分けてもらう
- 分けた質問を1つずつ、サイトのどのページで答えているかを自分で照らす
生成AIに頼むのは、記録から質問を漏れなく抜き出す作業と、分ける作業です。答えを書かせるのではありません。答えは営業が商談で実際に言っている言葉で書くのが、最も読者に通じます。
失注の理由をページの欠けに変える
商談が決まらなかった案件の記録も、同じ方法で読ませます。「断られた理由、または相手が最後まで迷っていた点を挙げてください」と頼み、挙がったものをページの欠けとして扱います。「費用が想定より高かった」なら料金ページに幅を書き足す、「実績が自社の業種に無かった」なら事例に業種を足す、「社内で説明しにくかった」なら上司に見せられる1枚の資料を作る、という対応です。
失注の理由は、サイトに来る前に他社へ流れた人が何を見て決めたかを教えてくれます。この情報は、アクセス解析の数字には出てきません。
AIに聞いてから来る人が確かめること
生成AIに「◯◯の会社を教えて」と聞いてから、候補の社名で検索して来る人が増えています。この人たちは比較をAIとの対話で終えていて、サイトで確かめたいのはAIが答えられなかったことだけです。AIが答えられないのは、その会社のいまの料金、対応できる範囲、担当する人、いまの受付状況といった、自社にしか無い情報です。
この記事で1周目を決定のページから始める理由の1つがここにあります。情報のページや比較の軸は、AIが代わりに答えるようになりつつあり、決定のページに書く自社固有の情報は、AIには書けません。AIに会社の情報を正しく答えてもらうための企業サイトの作りは、AIMA BLOGのAI検索に強い企業サイト設計とは?引用されやすい構成と見直し手順で扱っています。
月1ページの改善計画表
表の列は5つ
ここまでの内容を1枚の表にします。列は5つです。
- ページ名と分類(決定・比較・情報)
- いまの数字(来た人の数、進んだ人の割合)
- 営業に聞いた「このページで答えていない質問」
- 直す内容(書き足す・削る・並べ替える・リンクをつなぐ)
- 直す月
行はページごとに1行で、決定のページを上に、比較、情報の順に並べます。この表があれば、社内で「次は何を直すのか」を説明するのに5分で済みます。上位の解説記事が勧める「効果の大きさと実行しやすさで優先順位をつける」考え方は、この表では「決定のページを上に置く」ことで既に反映されています。同じ分類の中で迷ったら、来ている人が多いページを先にします。
1か月に1ページだけ
直すのは1か月に1ページです。2ページ同時に直すと、翌月に数字が動いても、どちらが効いたか分かりません。1ページなら、そのページに来た人のうち進んだ人の割合を、前の月と比べるだけで効果が分かります。
1か月に1ページは遅く感じるかもしれませんが、決定のページは4種類しかありません。4か月で1周目が終わり、問い合わせる直前の人が落ちる場所は塞がっています。作り直しに数か月かけて公開日まで何も変わらないより、毎月1か所ずつ確実に動くほうが、少人数の会社には向いています。
直した後に見る数字
見る数字は、直したページに来た人の数と、そのうち問い合わせや資料の受け取りに進んだ人の割合の2つです。全体の問い合わせ数だけを見ると、広告や季節の影響で動くので、直しの効果と区別がつきません。ページ単位の割合なら、そのページの直しの効果だけが見えます。
割合が動かなかったときは、直し方が間違っていたのではなく、直す場所が間違っていたことが多いです。営業に聞いた質問のうち、まだ答えていないものが残っていないかを表で確かめます。動いた場合は表に結果を書き込み、次の月のページに進みます。
続かなくなるときの手当て
この方法が止まるのは、担当者が1人で、他の業務に押されて「今月は直せなかった」が続くときです。手当ては2つあります。1つは、直す内容を「書き足す」だけに絞ることです。並べ替えやリンクは制作会社の手が要ることがありますが、書き足すだけなら担当者が1時間で終わります。もう1つは、月の初めに表を見る日を決めておくことです。表を見れば、次に直すページと内容は決まっているので、迷う時間がありません。
3か月止まっても、表は残っています。止まった月から再開すれば、順番を考え直す必要はありません。
まとめ
BtoBサイトの改善は、作り直しではなく、ページを商談に近い順に並べて1か月に1ページずつ直す作業です。
- 作り直しが要るのは、更新の仕組み・スマホの土台・事業の変化の3つだけ。それ以外はページ単位で直す
- 先に全ページを決定・比較・情報・その他に分け、GA4とSearch Consoleの数字と、営業に聞いた「よく聞かれること」を添える
- 1周目は決定のページ(問い合わせ・料金・事例・会社概要)、2周目は比較のページ(トップ・選び方・向いていない場合)、3周目は情報のページ(記事と資料から決定のページへの道)
- 入口を増やすのは3周目の後
- 商談の記録と失注の理由を生成AIに読ませて質問を抜き出し、サイトのどこで答えているかを照らす。答えは営業の言葉で書く
- 5列の改善計画表を作り、1か月に1ページだけ直し、そのページの割合で効果を見る
表ができたら、最初の1ページは問い合わせページです。直し方は問い合わせフォームの改善|離脱を減らす項目設計の手順に、道全体の10項目はホームページの問い合わせを増やす方法|今日直せる10項目にあります。