BtoBサイトのCVR改善|検討段階ごとに打ち手を変える手順

訪問者の検討段階を情報収集・比較検討・決定の3つに分け、段階ごとに受け皿を割り当てるイメージ

BtoBサイトのCVR(コンバージョン率、訪問者のうち問い合わせや資料請求まで進んだ人の割合)の改善は、サイト全体のCVRを1つの数字で追うのをやめ、訪問者の検討段階ごとに受け皿と打ち手を分けて直す作業です。段階に合わない受け皿を置いたままボタンやフォームを直しても、数字はほとんど動きません。

「CVRが低い」と言われて最初にやりたくなるのは、フォームの項目を減らす、ボタンを目立たせる、平均値と比べて一喜一憂する、の3つです。どれも無駄ではありませんが、BtoBのサイトには「まだ情報を集めている段階の人」と「発注先を決める段階の人」が同じページに来ています。前者に「無料相談を予約」を出しても押されませんし、後者に「お役立ち資料」を出しても遠回りです。1つのCVRは、この2種類の人を足して割った平均でしかなく、どこを直せばよいかを教えてくれません。

この記事は、BtoBサイトのCVRを検討段階ごとに分けて見て、段階ごとに打ち手を決める手順をまとめたものです。CVRを分ける考え方、分母の中身の確かめ方、情報収集・比較検討・決定それぞれの打ち手、生成AIに聞いてから来る人でCVRの意味がどう変わるか、直した効果の測り方の順に進みます。この記事は問い合わせ改善のハブ記事ホームページの問い合わせを増やす方法|今日直せる10項目の考え方をBtoB向けに広げたものです。10項目のうち、フォームとボタンの直しはそれぞれ問い合わせフォームの改善|離脱を減らす項目設計の手順とCTAの改善で問い合わせを増やす|配置と文言を決める手順に1本ずつ分けてあるので、この記事では繰り返しません。

CVRは1つの数字で追わない

BtoBのCVは3種類ある

CVR改善の話を始める前に、自社サイトで「CV」と数えているものを書き出します。BtoBのサイトでCVと呼ばれるものは、重さの違う3種類に分かれます。

  • 重い一歩:問い合わせ、無料相談の予約、見積もり依頼。営業担当が対応する
  • 中くらいの一歩:資料のダウンロード、セミナーやウェビナーの申し込み、デモの依頼。名前と連絡先を渡す
  • 軽い一歩:メールマガジンの登録、チェックリストの受け取り、記事の続きを読むためのリンク。渡すものが少ない

この3つを足して1つのCVRにすると、資料のダウンロードが増えただけで「CVRが上がった」ことになり、問い合わせが減っていても気づけません。逆に、問い合わせだけをCVと数えると、資料を取って半年後に問い合わせてくる人の動きが見えません。CVは3種類を別々に数え、別々に追います。

訪問者の検討段階は3つ

訪問者のほうも、3つの段階に分かれます。

  • 情報収集:課題は感じているが、解決策の種類も知らない。「◯◯とは」「◯◯ やり方」で来る
  • 比較検討:解決策の種類は分かり、どこに頼むか、何を選ぶかを比べている。「◯◯ 選び方」「◯◯ 費用」「A社 B社 違い」で来る
  • 決定:発注先はほぼ決まり、最後の確認をしている。社名で検索して来る、料金ページや会社概要を見る

段階の違いは、そのページに来るまでに何を調べてきたかの違いです。同じ人が3か月かけて情報収集から決定まで進むこともあれば、比較検討の途中で他社に決めて二度と来ないこともあります。

段階×受け皿の表で見る

段階を縦、受け皿を横にした3×3の表を作ります。情報収集の段階には軽い一歩、比較検討の段階には中くらいの一歩、決定の段階には重い一歩が対応します。表を作る目的は、いま自社のサイトで「どの段階の人にどの一歩を出しているか」を目で見ることです。

多くのBtoBサイトで起きているのは、すべてのページに重い一歩だけが置かれている状態です。記事ページの末尾にも「お問い合わせはこちら」しかなく、情報収集の段階の人には踏める一歩がありません。この状態でサイト全体のCVRを見ると、分母には情報収集の人が大勢いて、分子には決定の人しか入らないので、数字は低く出ます。低い原因は、フォームでもボタンでもなく、受け皿の欠けです。

平均値より自社の内訳

BtoBサイトのCVRの目安は各社が公開していて、たとえば才流はBtoBサイトのコンバージョン率は2%以上を目指そうという目安を示しています。ただし、目安との比較は「うちは低い」か「うちは高い」の感想で終わりやすく、次にどこを直すかにはつながりません。

比べる相手は、自社の先月と、自社の段階別・受け皿別の内訳です。「記事ページに来た人のうち資料を取った割合」「料金ページに来た人のうち相談を申し込んだ割合」のように、段階と受け皿を揃えた数字で見ると、どの段階で人が落ちているかが分かります。

先に確かめる分母の中身

来ている人の検討段階を知る

CVRの分母は訪問者数です。分母にどの段階の人がどれだけいるかを知らないまま分子を増やそうとしても、打ち手は選べません。段階の内訳は、来た人がどのページに最初に着地したかと、どんな検索語で来たかで、おおよそ分かります。

GA4(Googleアナリティクス4)のランディングページのレポートで、着地したページを記事・サービス紹介・料金・事例・会社概要・問い合わせに分けます。記事に着地した人は情報収集、サービス紹介や事例に着地した人は比較検討、料金や会社概要に着地した人は決定に近い、と仮に置きます。Search Console(Googleの検索結果での表示とクリックを見る無料ツール)の検索クエリで、社名を含む語で来た人の割合も出します。社名で来た人は決定の段階です。

段階の分からない流入を分けて見る

広告からの流入は、検索語が見えないことが多く、段階が読みにくい流入です。広告のCVRと自然検索のCVRを足して1つにすると、広告の出し方を変えただけで全体のCVRが動き、サイトの直しの効果が見えなくなります。流入経路ごとに分けて見ます。

社名検索で来た人のCVRは、他の流入とは別に置きます。社名で検索する人はすでに決定の段階なので、CVRは他より高く出るのが普通です。この人たちを分母に含めた全体CVRが高いからといって、サイトの受け皿がうまくできているとは限りません。指名検索で来た人を除いたCVRが、サイトの実力に近い数字です。

ページ別のCVRを出す

段階の内訳が見えたら、着地したページごとにCVRを出します。GA4でランディングページごとに、その後にキーイベント(GA4でCVとして登録した行動)が起きた割合を見ます。この数字は「そのページに来た人のうち、何かの一歩を踏んだ割合」です。

ページ別に見ると、記事ページのCVRが低いのは当たり前で、直すべきかどうかは、そこに軽い一歩が置いてあるかどうかで決まります。何も置いていないなら、まず置くことが打ち手です。すでに置いてあって低いなら、置いた一歩が記事の内容と合っていないことを疑います。そもそも自社の問い合わせが少ない原因がCVRにあるのか、それとも人が来ていないのかを先に確かめたい場合は、Webサイトの問い合わせが来ない原因|5段で切り分けて直すの第1段から第3段の見分け方が使えます。

情報収集の段階の打ち手

記事の末尾に軽い一歩を置く

情報収集の段階の人が来るのは、主に記事ページです。ここに置く一歩は、読んだ記事の続きとして自然に踏めるものにします。記事で「◯◯の手順」を説明したなら、その手順を自社で試すためのチェックリスト、もう少し詳しい資料、次に読む記事、の3つが候補です。

このとき「無料相談はこちら」を一緒に置いても構いませんが、主役にはしません。情報収集の段階で相談を申し込む人はほとんどいませんし、申し込まれたとしても、営業担当が「まだ何も決まっていない相手」と長く話すことになります。記事ページの重い一歩は、置いてある程度で十分です。

資料は「次に読む物」で設計する

情報収集の段階の受け皿として最も使いやすいのが資料のダウンロードです。ただし、資料が会社案内やサービス紹介のパンフレットだと、情報収集の人には早すぎて取られません。取られる資料は、記事の続きです。記事で扱った主題をもう一段深くした解説、記事の手順を自社で回すための書き込み式の表、記事で触れた失敗例の一覧、のように、読んだ記事と地続きの内容にします。

資料を用意しても取られないときは、資料の中身より、記事とのつながりと入力項目の多さを先に疑います。この段の直し方はホワイトペーパーのダウンロードを増やす方法|伸びない段を見つけて直すにまとめています。

相談を急がせない

情報収集の段階の人に踏んでほしいのは、次に来てもらうための一歩です。メールマガジンの登録や資料の受け取りで連絡先をもらえれば、その人が比較検討の段階に進んだときに、自社の名前を思い出してもらえます。この段階のCVRは、軽い一歩の数で見ます。問い合わせの数で見ると、いつまでも低いままで、何を直しても動かないように見えます。

比較検討の段階の打ち手

比べる軸を自社のページで示す

比較検討の段階の人は、どこに頼むか、何を選ぶかを比べています。この人たちがサイトで探しているのは、比べるための軸です。「何を基準に選べばよいか」「自社のような規模でも頼めるか」「向いていない場合はどんなときか」といった問いに、サービス紹介のページで答えます。

自社に有利な軸だけを並べた比較表は、読者にすぐ見抜かれます。向いていない場合を正直に書くほうが、向いている読者の問い合わせは増えます。比較の軸を示すページを持っているかどうかが、比較検討の段階のCVRを分けます。

費用・範囲・期間を先に書く

比較検討の段階で読者が最も知りたいのは、費用の目安、対応できる範囲、かかる期間の3つです。この3つが書いていないと、読者は問い合わせて聞くしかなく、聞くのが面倒な人は他社のページで確かめて、そちらに問い合わせます。

「案件により異なります」と書きたくなる気持ちは分かりますが、幅でよいので書きます。「月額◯万円から」「小さな案件なら◯週間」「◯◯には対応していません」の3行があるだけで、問い合わせの前に読者が自分で判断できます。判断できた人だけが問い合わせるので、問い合わせの数が減って見えることもありますが、質は上がります。

事例は同じ規模・同じ悩みで探せる形に

比較検討の段階の人は、事例を「自社と似ているか」で読みます。業種、規模、抱えていた悩み、頼んだ範囲、かかった期間、結果、の順に揃えて書き、一覧を業種や悩みで絞れるようにします。大企業の派手な事例が1つあるより、自社と同じ規模の地味な事例が3つあるほうが、問い合わせにはつながります。

中くらいの一歩を用意する

比較検討の段階の人に「無料相談」を出すと、まだ決めていないのに営業と話すのは重い、と感じる人が一定数います。この人たちのために、相談の手前に中くらいの一歩を置きます。候補は、簡易の診断、デモの視聴、見積もりの目安の自動計算、比較のための資料、の4つです。

中くらいの一歩は、読者に「決める前に確かめる手段」を渡すものです。どれを置くかは、自社のサービスで読者が決める直前に何を確かめたがるかで選びます。価格で迷う商材なら見積もりの目安、使い勝手で迷う商材ならデモ、自社に合うかで迷う商材なら診断です。

決定の段階の打ち手

問い合わせまでの道を短くする

決定の段階の人は、問い合わせる気でサイトに来ています。この人たちが落ちるのは、問い合わせページまでの道が長いときと、フォームの前で不安が残ったときの2つです。

どのページからも問い合わせページに1回のクリックで行けるようにし、問い合わせページの上には、費用がかかるか、営業の電話が来るか、返事はいつ来るか、の3つに答える3行を置きます。フォームの項目の仕分け方と、送る前と送った後の不安の消し方は、問い合わせフォームの改善|離脱を減らす項目設計の手順にあります。

相談の中身を先に見せる

「無料相談」と書いてあっても、相談で何が起きるかが分からないと、決定の段階の人でも手が止まります。初回の相談で誰が出てくるか、何分か、何を持っていけばよいか、相談の後に何が届くか、を相談の申し込みページに書きます。担当者の名前と顔があると、話す相手が見えて申し込みやすくなります。

送信後の対応までがCVR

決定の段階のCVRは、フォームの送信で終わりません。送信後に返信が遅い、返信の内容が定型文だけ、日程の候補が無い、といったことがあると、読者は並行して問い合わせた他社に流れます。CVRを上げても商談が増えないときは、送信から返信までの時間と、返信の1通目に何を書いているかを確かめます。

送信直後の自動返信で、担当者の名前と返信の目安を伝え、1通目の返信で日程の候補を出す、というところまでを決定の段階の打ち手に含めます。

電話とチャットの置き方

決定の段階の人には、フォーム以外の連絡手段も要ります。電話番号と受付時間をフォームの横に置き、急ぎの人が電話を選べるようにします。チャットは、営業時間内に人が返せるならCVRを上げますが、自動応答だけで人が出てこないチャットは、かえって不信を招きます。人が返せないなら置きません。

AIに聞いてから来る人のCVR

段階が「比較検討の終わり」に寄る

生成AI(ChatGPTやGeminiのような、質問に文章で答えるAI)に「◯◯の会社を教えて」「A社とB社の違いは」と聞いてから来る人は、情報収集と比較検討の大半をAIとの対話で終えています。サイトに来た時点で、その人の段階は比較検討の終わりか決定に寄っています。

これがCVRの意味を変えます。情報収集の段階の人がAIで済ませてサイトに来なくなると、分母から情報収集の人が減り、分子の決定の人はそのまま残るので、サイト全体のCVRは上がって見えます。しかし、訪問者の数は減っていて、問い合わせの数は変わらないか減っています。CVRが上がったのに喜べない状況です。この時期にCVRだけを見ていると、判断を誤ります。訪問者数、CVの数、CVRの3つを並べて、CVRの変化が分子の増加によるものか、分母の減少によるものかを確かめます。

AIが答えなかった1点で決まる

AIとの対話で比較を終えた人がサイトに来る目的は、AIが答えられなかったことの確認です。AIは一般的な比較はできますが、その会社のいまの料金、対応できる範囲、担当する人、いまの受付状況、といった自社にしか無い情報は答えられません。この人たちのCVRを決めるのは、サイトの最初の画面で、その「AIが答えられなかった1点」に即答できているかどうかです。

情報収集の段階の人に向けた記事や、比較検討の段階の人に向けた比較の軸は、AIが代わりに答えるようになりつつあります。逆に、決定の段階の人に向けた費用・範囲・担当者・進め方は、AIには書けません。これからのBtoBサイトで先に厚くするのは、決定の段階の受け皿です。

段階を指定してAIに自社サイトを読ませる

自社のサイトが段階ごとの受け皿を持てているかは、生成AIに読ませると確かめられます。ハブ記事で紹介した「初見の質問を出させる」方法を、段階を指定して3回行います。

  1. 「あなたは◯◯を初めて調べている担当者です。このページを読んで、次に何を読みたいか、何を受け取りたいかを挙げてください」
  2. 「あなたは◯◯を3社で比べている担当者です。このページを読んで、この会社を候補に残すために足りない情報を挙げてください」
  3. 「あなたはこの会社に発注をほぼ決めている担当者です。このページを読んで、問い合わせる前にまだ確かめたいことを挙げてください」

3つの答えを並べると、どの段階の受け皿が欠けているかが浮かびます。AIに文章を書かせるのではなく、欠けを見つけさせる使い方です。

測り方と続け方

段階別・受け皿別に分けて記録する

直す前に、いまの数字を段階別・受け皿別に記録します。GA4では、問い合わせの完了、資料のダウンロード、メールマガジンの登録、セミナーの申し込みを、それぞれ別のキーイベントとして登録します。1つにまとめると、この記事の考え方で見られなくなります。

記録する表は、縦に着地したページの種類(記事・サービス紹介・事例・料金・会社概要)、横に3種類のCVを置いた表です。月に1回、この表を埋めます。全体のCVRは、参考として欄外に書く程度にします。

1段階ずつ直して翌月と比べる

打ち手は1か月に1段階だけにします。情報収集の段階に軽い一歩を置いた月は、記事ページからの資料ダウンロードだけを見ます。比較検討の段階に費用の目安を書いた月は、サービス紹介や料金ページからの相談の申し込みだけを見ます。複数の段階を同時に直すと、翌月に数字が動いても、どれが効いたか分かりません。

順番は、決定の段階から直すのが確実です。決定の段階の人はすでに問い合わせる気で来ているので、道を短くするだけで数字が動きます。次に比較検討、最後に情報収集です。情報収集の段階の受け皿は、効果が出るまでに数か月かかります。

CVRが上がっても商談が増えないとき

軽い一歩や中くらいの一歩を増やすと、CVの数は増えますが、商談はすぐには増えません。資料を取った人が問い合わせるのは数か月後で、その間に自社から連絡しなければ、忘れられます。CVを段階別に分けたら、軽い一歩を踏んだ人に次の一歩を案内する仕組みも同時に要ります。

重い一歩が増えたのに商談が増えないなら、問い合わせの質を見ます。決定の段階の受け皿を厚くしたのに問い合わせの質が下がった場合は、費用や範囲の記載が読者の判断材料になっていない、つまり書き方が曖昧なことが多いです。問い合わせの数と一緒に、問い合わせのうち商談に進んだ割合も月に1回数えます。

まとめ

BtoBサイトのCVR改善は、1つの数字を上げる作業ではなく、訪問者の検討段階ごとに受け皿を置き、段階ごとに打ち手を変える作業です。

  • CVは重い・中くらい・軽いの3種類、訪問者は情報収集・比較検討・決定の3段階に分け、段階と受け皿を揃えて数字を見る
  • 分母の中身を、着地したページと検索語、流入経路、社名検索の割合で先に確かめる
  • 情報収集の段階には記事の続きとしての軽い一歩、比較検討の段階には比べる軸と費用・範囲・期間と中くらいの一歩、決定の段階には短い道と相談の中身の開示と送信後の対応
  • 生成AIに聞いてから来る人は決定に寄っているので、CVRだけでなく訪問者数とCVの数を並べて見る。AIが答えられない自社固有の情報を先に厚くする
  • GA4でCVを種類ごとに分けて登録し、1か月に1段階ずつ直して翌月と比べる

段階ごとの受け皿ができたら、それぞれの段階の受け皿を細かく直す番です。ボタンの文言と置き場所はCTAの改善で問い合わせを増やす|配置と文言を決める手順、問い合わせまでの道全体の点検はホームページの問い合わせを増やす方法|今日直せる10項目で扱っています。