BtoBのコンテンツマーケティングの事例で成果が続いている会社は、コンテンツを「読まれる物」ではなく「営業が商談で使う道具」として置いています。BtoBの買い手は、担当者が調べ、上司が決め、稟議で複数の人が確かめます。検討は数か月に及び、1本の記事を読んで即日申し込む、ということはまず起きません。だから事例を見るときは、「どの検討段階の、誰に向けて、営業のどの場面へつなげたか」の3点で分解しないと、自社に持ち帰れるものが残りません。
この記事では、BtoB企業10社の事例を、気づく・比べる・決めるの3つの検討段階と、担当者か決裁者かという読者、そして営業への出口で分解します。同じテーマ群では、6つの「型」で分けたコンテンツマーケティングの成功事例10選を先に公開しています。今回はそこで扱わなかった10社を選び、BtoBならではの「複数の人が長く検討する」場面に絞って見ていきます。段階と型の組み合わせを1枚の配分表にする考え方は、ハブ記事コンテンツマーケティングの戦略|1枚の配分表で決める手順の手順2と手順3にあります。この記事は、その配分表の各マスに「実在の会社はこう埋めている」という見本を置くものです。
事例を分解する3つの軸
検討段階・読者・営業の出口
BtoBの購買には、BtoCと違う3つの特徴があります。調べる人と決める人が別であること、検討に数週間から数か月かかること、そして最後は稟議や相見積もりという社内手続きを通ることです。この3つがあるので、BtoBの事例は次の3つの軸で読むと構造が見えます。
- 検討段階:困りごとに「気づく」段階か、解決策を「比べる」段階か、頼む先を「決める」段階か
- 読者:日々の実務で調べ物をする担当者か、予算と稟議を握る決裁者か
- 営業の出口:記事を読んだ人を、資料・セミナー・導入事例・問い合わせのどこへ渡し、営業がどの場面で使うか
同じ「記事」という形でも、気づく段階の用語解説と、決める段階の導入事例では、書き方も置き場所も営業との関わり方も変わります。
BtoCの事例と混ぜて読まない
コンテンツマーケティングの事例集には、BtoCの有名なオウンドメディアが混ざっていることが多くあります。BtoCの事例は「1人が、短い時間で、自分の財布で決める」前提で作られていて、ファンを増やす、世界観を伝える、という設計が中心なので、BtoBの会社がそのまま手本にすると行き詰まります。
BtoBでは、読者がその場で決められません。読んだ担当者が社内で説明し、決裁者が納得する材料を揃える、という2段階を助ける設計が要ります。取り上げる10社は、いずれもこの2段階のどこかを受け持っています。
10社の一覧
| 会社(メディア) | 主に受け持つ段階 | 主な読者 | 営業への出口 |
|---|---|---|---|
| ヌーラボ(サル先生のプロジェクト管理入門) | 気づく | 現場の担当者 | ツールの機能説明へ |
| カオナビ(人事用語集) | 気づく | 人事の実務担当者 | 製品資料・デモへ |
| jinjer(HR NOTE) | 気づく | 人事担当者・責任者 | セミナー・資料へ |
| PR TIMES(PR TIMES MAGAZINE) | 気づく〜比べる | 広報・マーケ担当者 | 配信サービスの紹介へ |
| LISKUL | 気づく〜比べる | Web担当者・営業・管理職 | 資料ダウンロードへ |
| CINC(Keywordmap ACADEMY) | 比べる | SEO・コンテンツの実務者 | 無料トライアルへ |
| 弁護士ドットコム(クラウドサインブログ) | 比べる | 法務・管理部門 | ひな形・資料・問い合わせへ |
| ミツエーリンクス(ナレッジ) | 比べる | 企業のWeb担当者 | セミナー・資料・問い合わせへ |
| セールスフォース・ジャパン(ブログ) | 比べる〜決める | 経営層・IT部門の決裁者 | イベント・資料へ |
| LayerX(バクラク導入事例) | 決める | 決裁者・稟議を書く担当者 | 資料3点セット・問い合わせへ |
この一覧で見てほしいのは、「営業への出口」の列がすべて埋まることです。読み物として完結しているメディアは1つもなく、どの会社も次に渡す物を決めています。以下、段階の早い順に1社ずつ見ていきます。
BtoB企業10社の事例
ヌーラボ:入門講座で仕事の覚え方から入る
プロジェクト管理ツール「Backlog」を提供するヌーラボは、「サル先生のプロジェクト管理入門」という学習コンテンツを公開しています(公式ページ)。中身はツールの使い方ではなく、プロジェクト管理という仕事そのものの覚え方です。入門編・実践編・用語集の3つのコースに分かれ、初心者は入門編から、経験者は実践編から読むよう案内されています。
この設計が受け持つのは、「気づく」段階のいちばん手前です。ツールを探している人ではなく、「プロジェクト管理を任されたが何から手をつければよいか分からない」という人を読者にしています。そこから、マイルストーンやガントチャートで期限管理ができるというBacklogの機能説明へつながり、読者は「学んだことをそのまま実行できる道具」としてツールに出会います。
BtoBで真似る価値があるのは、「自社の商材が解決する仕事」の教科書を先に書く、という順番です。商材の説明から始めると比べる段階の人しか来ませんが、仕事の覚え方から始めると、まだ商材の存在を知らない人が入口に立ちます。ここで出会った読者は、比べる段階に進んだときに最初の候補として覚えています。
カオナビ:用語集で人事の調べ物を受ける
タレントマネジメントシステムのカオナビは、「人事用語集」を公開しています(公式ページ)。人事評価・人事戦略・人材管理・人材育成・人材採用・ビジネス用語全般・人事労務の7つのカテゴリーで、人事の実務で出てくる言葉を解説する形です。
用語集は、「気づく」段階の担当者の調べ物を受け止める型です。人事の担当者は、会議で出てきた言葉や、上司から指示された制度の名前を検索します。その検索に答える記事の中に、製品資料・料金・デモやトライアルへの案内が置かれているので、読者は調べ物のついでに「この言葉を扱う道具がある」と知ります。
この型の強みは、営業がまだ会っていない会社の担当者に、言葉の定義の段階から接点を作れることです。調べ物をした人の多くはその場では検討に進まないので、製品の導線を記事の中に常に置き、名前を覚えてもらうことに徹しています。用語を網羅する型は後述するAI時代の変化をいちばん受けますが、それでも「定義を先に書いた側」であることの価値は残ります。
jinjer:業界メディアとして9年続ける
人事労務クラウドのjinjerが運営する「HR NOTE」は、採用・組織・労務の3つのカテゴリーで人事向けの記事を出し続けているメディアです(公式ページ)。サイトには9周年の表記があり、年単位で続いてきたことが読み取れます。記事のほかに、セミナーの案内とアーカイブ配信、ダウンロードできる資料とテンプレート、インタビューと事例があります。
HR NOTEが受け持つのは、「気づく」段階の人事担当者と責任者です。特徴は、自社製品の名前を前面に出さず、人事という職種に向けた業界メディアとして立っていることです。読者は「jinjerのサイト」ではなく「人事の情報を読む場所」として訪れ、記事からセミナーや資料へ進む中で、運営会社の製品を知ります。
この型を真似るときに外せないのは、続ける前提で体制を組むことです。業界メディアは半年では認知されず、年単位で記事と資料とセミナーの3つを積み重ねてはじめて、読者の側から「あのメディア」と呼ばれます。オウンドメディアの運営体制で触れたとおり、続けられる最小の人数と頻度を先に決めることが、この型の成否を分けます。
PR TIMES:広報担当者の手を動かす記事
プレスリリース配信サービスのPR TIMESが運営する「PR TIMES MAGAZINE」は、広報PRの担当者に向けたメディアです(公式ページ)。プレスリリースの書き方や配信の手順、メディアとの関係づくり、採用広報といった主題を、実務のハウツー記事とテンプレートで扱います。加えて、企業へのインタビューと事例、PR用語の解説、記念日やトレンドの活用術、イベントのレポートがあります。
このメディアが受け持つのは、「気づく」から「比べる」にかけての広報担当者です。設計の中心は、読んだ人がそのまま手を動かせることにあります。プレスリリースのテンプレートを使って書き、記念日に合わせて配信する、という手順を記事が示し、その手順の先に自社の配信サービスのプランと活用事例が置かれています。
BtoBで学べるのは、「読者の仕事の手順を記事にし、その手順の中に自社の商材が自然に出てくる位置を作る」ことです。手順の途中で商材が必要になる構造なら、営業文を書かなくても読者は商材にたどり着きます。
LISKUL:資料ダウンロードまでを1本の記事に収める
LISKULは、マーケティング、集客・広告、接客・制作、セールス、DXなど、Web集客と経営課題の実務を扱うメディアで、運営はメディアエンジンです(公式ページ)。用語や基礎知識の解説、インタビュー、比較やランキングの記事に加えて、ノウハウ資料のダウンロードが専用の場所に用意されています。企業が提供するコンテンツを載せる「ブランドチャンネル」と、記事広告の掲載サービスもあります。
読者はWebマーケティングの担当者、営業、管理職で、段階でいえば「気づく」から「比べる」までを広く受けています。特徴は、記事で基礎を説明し、同じ主題の資料をダウンロードの形で持ち帰らせる、という1本の記事の中での流れが徹底されていることです。読者は記事で理解し、資料で社内に説明する、という2段階を1か所で済ませられます。
もう1つ見ておきたいのは、メディアが育った結果として、企業のコンテンツを載せる枠そのものが商品になっている点です。最初から狙える設計ではありませんが、「読者が集まる場所は、それ自体が資産になる」ことを示す事例です。
CINC:ツールの学び場をメディアにする
SEOとコンテンツマーケティングの分析ツール「Keywordmap」を提供するCINCは、「Keywordmap ACADEMY」というメディアを運営しています(公式ページ)。扱う主題はSEO、コンテンツマーケティング、SNS、BtoBマーケティングで、解説記事と事例のほかに、セミナーのレポート、「SEOチェックリスト」や「インハウスSEOの教科書」といったホワイトペーパー、オンラインセミナーの開催があります。
このメディアが受け持つのは「比べる」段階の実務者です。SEOのやり方を学びに来た人に、チェックリストや教科書という「手順書」を渡し、その手順を実行する道具として無料トライアルへ案内します。読者は、やり方を学ぶ過程でツールの必要性を自分で見つける流れになっています。
ツールを売る会社がこの型を取る理由は、ツールの機能比較だけでは選ばれないからです。比べる段階の読者は「どのツールか」より先に「自分たちは何をすべきか」を迷っています。そこに手順書を渡した会社は、手順の実行に必要な道具として自然に候補に残ります。ホワイトペーパーの事例で見た「中盤で読者に手を動かさせる」作法と同じ考え方です。
弁護士ドットコム:法令解説とひな形で法務に届く
電子契約サービス「クラウドサイン」を提供する弁護士ドットコムは、「クラウドサインブログ」で契約業務に関わる人に向けた記事を出しています(公式ページ)。記事の分類は、電子契約の基礎知識と運用ノウハウ、契約に関する事例・判例・解説、法律・法改正・制度の解説、契約実務、契約専門書籍のレビューなど10種類です。無料のひな形が付いた記事があり、セミナーと動画ライブラリは別のセクションとして用意されています。
読者は法務・営業・管理部門で、段階は「比べる」が中心です。特徴は、電子契約の説明に閉じず、覚書と契約書の使い分けのような、契約実務そのものの疑問に答えていることです。法務の担当者は、契約の疑問を調べる過程でこのブログに着き、記事末尾の資料ダウンロードや問い合わせから、電子契約の検討に進みます。
BtoBで学べるのは、「商材の隣にある専門領域」を記事の主題にすることです。電子契約を売る会社が契約実務と法改正を解説するように、自社の商材が使われる仕事の専門知識を出すと、商材を探していない専門職にも届きます。法務のように慎重な部門ほど、この積み重ねが信頼の材料になります。
ミツエーリンクス:専門知見を複数の形で出し続ける
Web制作のミツエーリンクスは、サイトの「ナレッジ」として、コラムと複数の専門ブログ、ポッドキャスト、広報誌、メールニュース、用語集、資料集を公開しています(公式ページ)。主題はWeb制作の技術、Webアクセシビリティ、デジタルマーケティング、UI/UX、ブラウザの更新情報などで、メールニュースは「月2回を原則」と明記されています。
読者は企業のWeb担当者で、段階は「比べる」です。制作会社を比べる担当者は、実績の一覧より「この会社はどこまで分かっているか」を見ます。アクセシビリティやブラウザの仕様変更のような、売り込みに直結しない専門的な発信を続けていることが、その問いへの答えになっています。
この事例から学べるのは、形を1つに絞らず、しかし主題は専門領域から外さない、という組み方です。記事・音声・紙・メールと形は多いのに、どれも「Webの品質と技術」の話に収まっているので、読者の中で1つの像を結びます。形を増やすこと自体が目的になると散漫になりますが、主題が1つなら形の多さは接点の多さになります。
セールスフォース・ジャパン:言葉を先に作って議論の場に立つ
顧客管理システムのセールスフォース・ジャパンのブログは、経営層とIT部門の意思決定者を読者に置いています(公式ページ)。記事の型は、「SaaS is Dead」「エージェント・ウォッシング」のような新しい言葉の解説、経営者やIT責任者へのインタビュー、顧客の導入事例、有識者の座談会、連載のハウツーで、イベントの案内とホワイトペーパーへの導線が付いています。
受け持つ段階は「比べる」から「決める」で、読者は決裁者です。特徴は、まだ定まっていない概念に先に名前をつけ、その言葉の意味を自社の文脈で説明していることです。決裁者が社内で「この流れにどう対応するか」を議論するとき、議論の言葉そのものを提供した会社は、議論の場に最初から立っています。
中小企業がこの規模を真似ることはできませんが、構造は小さくしても使えます。自社の業界で、顧客がまだ言葉にできていない変化に名前をつけ、その言葉で記事とセミナーを組むと、決裁者に「状況を整理してくれた会社」として記憶されます。
LayerX:導入事例を4つの軸で探せるようにする
経理や労務の業務を支援する「バクラク」を提供するLayerXは、導入事例のページを、サービス別・業種別・従業員数別・課題や目的別の4つの軸で絞り込めるようにしています(公式ページ)。サービスは9種類、業種は13のカテゴリー、従業員数は5つの段階、課題は手入力の削減やペーパーレス化など13の項目に分かれ、事例は企業名と施策と関連タグを付けたカードの形で並びます。目立つ事例は「ピックアップ」として前に出され、資料の3点セットと問い合わせの導線が付いています。
この設計が受け持つのは、「決める」段階の決裁者と、稟議を書く担当者です。稟議を通すとき、担当者が探すのは「自社と同じ業種、同じ規模、同じ課題の会社が導入して、どうなったか」という1枚です。4つの軸の絞り込みは、その1枚を数十の事例の中から数秒で見つけさせる仕組みです。
導入事例は多くのBtoB企業が持っていますが、「探せる形」にしている会社は多くありません。事例を増やすことより、顧客が稟議で使う軸で絞り込めるようにすることが、決める段階の要点です。コンテンツマーケティングの種類で事例ページを「決める段階の証拠」と呼んだのは、この使われ方を指しています。
10社に共通する3つの作法
担当者の調べ物から入り、決裁者の材料で終える
10社を段階順に並べると、入口は必ず担当者の調べ物です。プロジェクト管理の覚え方、人事の用語、プレスリリースの書き方、契約の疑問。どれも担当者が日々の仕事で検索する言葉です。そして出口は、資料・導入事例・イベントという、担当者が決裁者に見せる材料になっています。
BtoBのコンテンツは「担当者を読者にして、決裁者に届く物を渡す」という二重の設計で作られています。担当者だけに向けると稟議で止まり、決裁者だけに向けると最初の検索で見つかりません。両方を1つの流れでつなぐことが、10社に共通しています。
記事の隣に「持ち帰れる形」がある
10社とも、記事の隣に資料・テンプレート・ひな形・チェックリストのどれかがあります。読者が記事で理解したことを、社内に持ち帰って説明するための形です。記事だけで完結しているメディアは1つもありません。
持ち帰れる形が要るのは、読んだ人と決める人が別だからです。担当者は記事に納得しても、上司に「この記事を読んでください」とは言いにくく、資料を添えて説明します。記事の隣に資料を置くことは、読者の社内説明を助けることです。
営業が使う場面が決まっている
導入事例は稟議で、ひな形と手順書は検討の初期で、入門講座は商談前の教育で使われます。10社のコンテンツは、営業プロセスのどこで、誰が、何のために使うかが決まっています。マーケティングが作り、営業が使わない、という分断がありません。
ハブ記事のコンテンツマーケティングの戦略で「営業が使っていない」ことを戦略が崩れる兆候に挙げたのは、この裏返しです。使う場面が先に決まっていれば、作るべき物も、測るべき数字も、自然に決まります。
AI時代に強いBtoB事例の条件
用語の定義はAIに要約される側になる
10社のうち、用語集や言葉の解説を軸にする型は、AI時代の変化をいちばん受けます。検索した人が、検索結果の上に出るAIの要約や、対話型AIの回答で定義を知り、記事まで来ずに済ませることが増えるからです。カオナビやセールスフォースの用語型は、訪問数という数字で見れば、この影響を避けられません。
それでも、定義を先に書いた側であることの価値は残ります。AIは要約を作るときに元の文章を参照し、回答の中で出典を示すことがあります。業界で最初にその言葉を丁寧に定義した記事は、要約の元になる側に回ります。用語型を続けるなら、「訪問数」ではなく「AIの回答に自社の定義が使われているか」を見る数字に替える必要があります。この測り方はコンテンツマーケティングのKPIで扱っています。
自社しか出せない材料が引用される
逆に、AI時代に価値が上がるのは、10社の中でも自社しか出せない材料を置いている部分です。LayerXの導入事例、弁護士ドットコムのひな形、ミツエーリンクスの専門ブログ、CINCのセミナーレポートは、どれもその会社の仕事から生まれた一次情報で、AIが一般論から生成できるものではありません。
一般的な解説記事はAIがその場で作れるようになったため、「誰が書いても同じになる部分」の価値は下がり続けます。残るのは、顧客の実名と結果、自社で作った雛形、自社で測った数字です。これから事例を増やすなら、解説記事の本数ではなく一次情報の置き場を増やすことに時間を使う順番になります。
稟議の場面はAIに置き換わらない
AIがどれだけ検索の入口を変えても、BtoBの購買の最後は人が決めます。稟議で上司が見るのは、AIの要約ではなく、同業他社の導入事例と、担当者が整理した比較の材料です。LayerXの絞り込める導入事例や、LISKULの持ち帰れる資料が受け持っているのは、この人の手が入る場面です。
つまりAI時代のBtoBコンテンツは、「気づく段階の入口はAIに取られうる」「決める段階の材料は人の手に残る」という2つの前提で組み直すことになります。入口の数字が減ることは織り込み、決める段階の材料に力を移すのが、10社の設計から導ける方向です。
自社で再現する手順
営業の商談から逆算して1本決める
最初に作るのは、気づく段階の記事ではなく、営業がいま商談で困っている1場面を助ける1本です。営業に「商談で、あれば助かる資料や事例は何か」を聞き、いちばん多く挙がった物を最初のコンテンツにします。導入事例の1枚、比較の表、見積の前提をまとめた資料のどれかになることが多いです。
営業が使う物を最初に作ると、「使われたか」という結果がすぐに返ってきます。気づく段階の記事は成果が見えるまでに数か月かかり、その間に続ける理由を見失いがちだからです。
段階を1つ選び、手本の構成を写す
次に、10社の中から自社の商材と段階が近い1社を選び、その構成を写します。写すのは文章ではなく、「何を読者に渡し、どこへ案内しているか」という骨組みです。ツールを売るならCINCの手順書とトライアルの流れ、専門職に売るなら弁護士ドットコムの専門解説とひな形の流れ、稟議が重い商材ならLayerXの絞り込める導入事例、という具合です。
段階を1つに絞るのは、3つの段階を同時に埋めようとすると、どれも薄くなるからです。コンテンツマーケティングの始め方で3か月の進め方を示したとおり、最初の3か月は1つの段階に集中し、次の3か月で隣の段階に広げます。
3か月で営業に使われたかを確かめる
3か月たったら、訪問数ではなく、「営業が商談で使ったか」「資料が社内で共有されたか」を確かめます。使われていれば次の1本を同じ段階に足し、使われていなければ、段階か読者か出口のどれかがずれています。10社の一覧表に自社の1本を書き足してみて、空欄になる列があれば、そこがずれの場所です。
この確かめ方は、数字の大小ではなく、営業プロセスの中にコンテンツが位置を持ったかを見るものです。
まとめ
BtoBのコンテンツマーケティングの事例10社を、検討段階・読者・営業の出口の3つの軸で分解しました。入口は担当者の調べ物、出口は決裁者に見せる材料、そして営業が使う場面が決まっている、という3つの作法が10社に共通しています。
AI時代には、気づく段階の入口の数字が減ることを織り込み、自社にしか出せない一次情報と、稟議で使われる決める段階の材料に力を移すことになります。自社で始めるなら、営業の商談から逆算して1本を決め、近い1社の骨組みを写し、3か月後に営業に使われたかで確かめてください。