コンテンツマーケティングのKPI|検討段階別の指標と決め方

気づく・比べる・決めるの3段階に分けた表に、それぞれ追う数字を書き込んでいくイメージ

コンテンツマーケティングのKPIとは、問い合わせや売上という最終目標にたどり着くまでの進み具合を、読者の検討段階ごとに分けて測る中間の数字です。困りごとに「気づく」段階の読者に向けた記事は表示回数と検索経由の訪問数で、解決策を「比べる」段階に向けた事例や資料は閲覧数とダウンロード数で、頼む相手を「決める」段階に向けたページは問い合わせ数と商談化の数で測ります。1つの数字で全体を測ろうとすると、必ずどこかの段階が見えなくなります。

KPIの決め方でいちばん多いつまずきは、数字の選び方ではなく、数字の「置き場所」の間違いです。気づく段階の記事に問い合わせ数を当てると、半年たっても0件のまま報告が続き、記事そのものが失敗と見なされます。逆に、決める段階の事例ページに訪問数を当てると、月に数十人しか読まれない事例が「成果が小さい」と判定されます。どちらも数字は正しく、置き場所が違うだけです。

この記事は、読者の検討段階ごとにKPIを分けて置く方法を扱います。段階と型の組み合わせを1枚の配分表にする考え方は、同じテーマ群のハブ記事コンテンツマーケティングの戦略|1枚の配分表で決める手順の手順5で触れています。この記事はその手順5を、数字の選び方から月次報告の型まで掘り下げたものです。

KPIは段階ごとに置く

KGIとKPIの関係

KGI(最終目標の数字)は、問い合わせ件数や受注金額のように、事業として達成したい1つの数字です。KPI(中間の数字)は、そこに至る途中の進み具合を測る数字で、KGIが動くより前に動きます。コンテンツマーケティングでは、KGIが動くまでに数か月から1年かかるため、KPIが無いと、その間ずっと「成果なし」の報告が続きます。

KPIの役目は2つです。1つはKGIが動く前に「計画どおり進んでいるか」を示すこと、もう1つは止まっている箇所を指し示すことです。この2つを果たすには、KPIがKGIと因果でつながっていなければなりません。訪問数が増えても問い合わせが増えない設計では、訪問数はKPIとして働いていないことになります。

段階は3つ、数字も3組

読者の検討段階は、困りごとに「気づく」、解決策を「比べる」、頼む相手を「決める」の3つで足ります。コンテンツの型もこの3段階のどれかに属するので、KPIも3組に分けて置きます。

段階読者の状態主なコンテンツの型追う数字
気づく困りごとを言葉にし始めた解説記事・用語の説明表示回数、掲載キーワード数、検索経由の訪問数
比べる解決策を並べている事例ページ、比較表、ダウンロード資料事例と比較ページの閲覧数、資料のダウンロード数、再訪数
決める頼む相手を絞っている料金・サービス説明、会社情報、よくある質問問い合わせ数、商談化した数、営業が使った回数

表の右の列を見ると、段階が進むほど数字が小さく、動きが遅くなることが分かります。気づく段階の表示回数は月に数千回になることがありますが、決める段階の問い合わせは月に数件です。桁が違う数字を1つの報告に並べると、小さい数字が常に「悪く」見えるので、段階ごとに別の行で報告します。

メディアの時期とは別の軸

KPIを時期で切り替える考え方もあります。立ち上げ期は公開本数、成長期は訪問数、成熟期は問い合わせ数、という分け方で、これはオウンドメディアのKPI|立ち上げ期に追う数字と段階別の切り替えで扱っています。時期で切り替える軸と、この記事で扱う検討段階で分ける軸は、矛盾するものではなく、縦と横の関係にあります。

時期の軸は「今は何を重く見るか」を決め、検討段階の軸は「どの型にどの数字を当てるか」を決めます。立ち上げ期であっても、事例ページには最初から閲覧数と問い合わせへの寄与を当て、解説記事には表示回数を当てます。時期の軸だけで運用すると、立ち上げ期の事例ページが「本数」でしか評価されず、せっかく作った受け皿が働いているかどうかを見落とします。

気づく段階のKPI

気づく段階のコンテンツは、読者が困りごとを検索したときに見つかる入口です。入口の役目は「見つかること」と「読まれること」なので、追う数字もその2つに分けます。

表示回数と掲載キーワード数

公開した記事が検索結果に出た回数が表示回数で、Search Consoleの検索パフォーマンスレポートで確認できます(Search Console ヘルプ:検索パフォーマンス レポート)。公開から数週間は、クリックより先に表示回数が動くので、入口が「見つかる位置に置かれたか」を最初に示す数字になります。

表示回数と組で見たいのが、掲載キーワード数です。1本の記事がどれだけの言葉で検索結果に出ているかを数えたもので、意図した主題の周辺にどこまで広がったかが分かります。表示回数が多くても掲載キーワードが1語に偏っていれば、その1語の順位が落ちた瞬間に入口が消えます。

  • 表示回数:公開から4週間ごとに前の4週間と比べる
  • 掲載キーワード数:記事ごとに、意図した主題の語が入っているかを目で確かめる
  • 平均掲載順位:表示回数の多い語だけに絞って見る。全語の平均は実態を表さない

検索経由の訪問数

表示された記事が実際に読まれた数が、検索経由の訪問数です。Search Consoleのクリック数と、GA4の「Organic Search」経由のセッション数は、数え方が違うので一致しません。どちらかに決めて、同じ数字を追い続けます。おすすめは、記事単位で順位と並べて見られるSearch Consoleのクリック数です。

ここで見ないほうがよいのが、サイト全体の訪問数です。全体の数字には、社名で検索して来た既存の顧客や、広告からの訪問が混ざります。気づく段階の記事が働いているかは、「検索経由で」「その記事に」来た数でしか測れません。

読まれ方を示す数字

訪問の先で、記事が最後まで読まれたかを示す数字も1つ置きます。GA4のエンゲージメント率は、10秒以上の滞在、キーイベントの発生、2ページ以上の閲覧のいずれかがあったセッションの割合として定義されています(GA4 ヘルプ:エンゲージメント率と直帰率)。記事ごとのこの数字を並べると、開かれてすぐ閉じられている記事が見つかります。

ただし、この数字は目標値を置く種類の数字ではありません。同じ主題の記事どうしで比べ、極端に低い記事だけを直すための「見つける数字」として使います。目標値を置くと、数字を上げるための小手先の修正に時間が流れます。

比べる段階のKPI

比べる段階のコンテンツは、気づく段階から来た読者を受け止め、自社を候補に入れてもらう役目です。訪問数ではなく「候補に入ったか」を示す数字で測ります。

事例と比較ページの閲覧数

事例ページや比較表は、検索で直接見つかることが少なく、解説記事や営業のメールから流れてきて読まれます。だから訪問数そのものは小さく、解説記事と同じ軸で比べてはいけません。見るのは、解説記事を読んだ人のうち、どれだけが事例ページへ進んだかという「つながり」です。

GA4の経路データ探索で、解説記事を起点に次に読まれたページを並べると、事例へ進んでいる記事と、読んで終わりになっている記事が分かれます。進んでいない記事は、本文中の事例への案内が無いか、案内の位置が遠いかのどちらかで、書き直しより案内の追加で直ります。

  • 事例ページの閲覧数:月ごとに、流入元を「検索」「記事から」「営業のメールから」に分けて数える
  • 解説記事から事例への遷移数:記事ごとに数え、0の記事を洗い出す
  • 1人あたりの事例閲覧数:複数の事例を読んだ人は、比べる段階に入っている合図

資料のダウンロード数

ダウンロード資料は、読者が連絡先を預けてでも持ち帰りたいと判断した証拠です。この数字は「比べる段階に入った人数」の近似になります。GA4ではダウンロード完了をキーイベントとして登録すると、資料ごとの件数と流入元が追えます(GA4 ヘルプ:キーイベントについて)。

ダウンロード数は、資料の内容より、置き場所と案内の文言で大きく変わります。件数が伸びないときは、まず資料がどのページから案内されているかを確認します。資料のダウンロードを増やす具体の手は、ホワイトペーパーのダウンロードを増やす方法に分けて書いてあります。

再訪とメール登録

比べる段階の読者は、1度では決めません。同じ人が別の日にもう一度来ているか、メールの配信に登録したかが、候補に残っている合図です。GA4のリピーター数は厳密な個人の特定ではありませんが、同じ端末からの再訪の傾向をつかむには十分です。

メール登録は、再訪を「待つ」のではなく「作る」ための数字です。登録数そのものより、登録後に配信したメールから事例や料金ページへ戻ってきた数を見ると、メールが比べる段階を進めているかが分かります。

決める段階のKPI

決める段階のコンテンツは、料金や進め方、会社の情報、よくある質問など、最後の不安を消すためのページです。ここで追うのは、KGIに最も近い数字です。

問い合わせ数と商談化した数

問い合わせ数は、コンテンツマーケティングのKGIに置かれることが多い数字ですが、KPIとしても扱います。ただし問い合わせの「件数」だけでは足りません。問い合わせのうち、商談に進んだ数と、進まなかった理由を分けて数えます。件数が増えても商談化が増えなければ、コンテンツが集めている読者と、売りたい相手がずれています。

問い合わせの直前に読まれていたページを記録しておくと、どのコンテンツが決め手になったかが分かります。フォームの送信時に、直前のページのURLを一緒に送る仕組みを最初に入れておくと、この記録が自動でたまります。

  • 問い合わせ数:月ごと。フォーム・電話・メールを分ける
  • 商談化した数:問い合わせのうち、打ち合わせに進んだ数
  • 決め手のページ:問い合わせ直前に読まれていたページの集計

営業が使った回数

決める段階のコンテンツには、Webの数字に出ない働きがあります。営業が商談の前後に事例ページのURLを送り、資料を添付し、よくある質問のページを案内する回数です。この回数は、GA4にもSearch Consoleにも出ません。営業に「今月送ったコンテンツと相手」を月末に1行ずつ書いてもらうだけで数えられます。

この数字を置く理由は、決める段階のコンテンツを「訪問数が少ない」という理由で削らせないためです。月に30回しか読まれない事例ページが、その30回のうち20回を営業が商談相手に送っているなら、そのページは会社でいちばん働いているコンテンツです。

受注までの期間

コンテンツが決める段階で働くと、問い合わせから受注までの期間が短くなります。読者が検討の大半を自分で済ませてから来るためで、打ち合わせの回数も減ります。この数字は月ごとでは動かないので、四半期ごとに、問い合わせから受注までの平均日数を記録します。

期間は、問い合わせの件数と違って、コンテンツの「質」を示す数字です。件数が横ばいでも期間が縮んでいれば、決める段階のコンテンツが働いていると読めます。

KPIの決め方5手順

ここからは、段階ごとの数字を自社に当てはめて決める手順です。順番を守ると、数字が多すぎて追えなくなる失敗を避けられます。

手順1:KGIを1つに決める

最初に、コンテンツマーケティングで動かしたい最終の数字を1つだけ決めます。問い合わせ件数、商談数、採用の応募数のどれかで、2つ以上は置きません。KGIが2つあると、KPIも2系統になり、少人数では追えなくなります。目的の選び方は、コンテンツマーケティングの戦略|1枚の配分表で決める手順の手順1で、期限と撤退の基準の決め方と合わせて書いています。

手順2:配分表の型ごとに数字を当てる

次に、作る予定のコンテンツを段階と型で並べた配分表に、1行ずつ数字を書き込みます。解説記事の行には表示回数と検索経由の訪問数、事例ページの行には閲覧数と営業が使った回数、というように、型ごとに1つか2つです。

ここで大切なのは、型に合わない数字を書かないことです。解説記事の行に問い合わせ数を書きたくなりますが、解説記事が問い合わせに直接つながることはまれで、書いた瞬間にその記事は「成果の出ない記事」になります。解説記事は「事例ページへの遷移数」までを受け持ち、その先は事例ページの行が受け持ちます。

型当てる数字当てない数字
解説記事表示回数、検索経由の訪問数、事例への遷移数問い合わせ数
事例ページ閲覧数、営業が使った回数、問い合わせ直前の閲覧検索順位
ダウンロード資料ダウンロード数、資料経由の再訪表示回数
料金・サービス説明問い合わせ数、商談化した数滞在時間

手順3:目標値は実績の1本から

目標値は、最初から置かないのが正解です。公開した直後の数字には比べる基準が無く、他社の数字を借りると、自社の業種や規模と合わない値を追うことになります。公開から3か月の実績が出てから、その数字を基準に「次の3か月で何倍にするか」を置きます。

基準にする実績は、いちばん読まれた1本ではなく、中央あたりの1本です。いちばん読まれた記事を基準にすると、残りの全記事が目標未達になります。

手順4:計測の道具は最小で

計測の道具は、Search Console、GA4、問い合わせの記録簿の3つで足ります。Search Consoleは気づく段階、GA4は比べる段階、記録簿は決める段階を受け持ちます。有料のツールは、この3つで追えない数字が出てから足します。

記録簿は、スプレッドシートに「日付・経路・直前のページ・商談化の有無・営業が送ったコンテンツ」の5列を作るだけです。この5列が、決める段階のKPIの全てを支えます。

手順5:月次報告は1枚にする

月に1度、段階ごとに3行で報告します。気づく段階の行には表示回数と検索経由の訪問数、比べる段階の行には事例の閲覧数とダウンロード数、決める段階の行には問い合わせ数と商談化した数です。各行に前月との差と、一言の解釈を添えます。

報告に本数を入れるときは、いちばん下の行に「今月公開した本数」として置き、各段階の数字とは別の扱いにします。本数を上の行に混ぜると、本数が増えた月は全部が良く見え、本数が減った月は全部が悪く見えます。

AI時代に足すKPI

AIが検索結果の上に回答を出し、ChatGPTやGeminiに直接質問する読者が増えたことで、気づく段階の数字の読み方が変わりました。従来の3組に、足す数字と、読み替える数字があります。

表示が増えて訪問が伸びない

AIが検索結果の上で回答をまとめると、記事は「表示された」のに「読まれない」ことが増えます。表示回数は動くのに検索経由の訪問数が動かない記事が出てきたら、記事の内容が悪いのではなく、読者がAIの回答で用を済ませている可能性を先に考えます。

この場合、気づく段階のKPIとして表示回数と訪問数の両方を並べ、その差を追います。差が広がっている記事は、AIの回答に取り込まれやすい主題を扱っているということで、次に書く主題を「AIが答えにくい、自社の経験や判断を含むもの」に寄せる判断材料になります。

指名検索数を決める段階に足す

AIの回答で社名を知った読者は、記事を経由せずに社名で検索して来ます。この動きは、従来の検索経由の訪問数には「指名検索」として混ざり、気づく段階の数字に紛れます。これを分けて、決める段階の行に「指名検索数」として足します。Search Consoleで社名とサービス名を含む語に絞れば、月ごとの数が取れます。

指名検索数は、コンテンツ単位の数字ではなく、コンテンツ全体が積み上げた認知の数字です。公開した記事がAIの回答に使われ始めると、記事のクリック数が増えないまま指名検索が増える、という動きが先に出ます。この動きを見落とすと、記事の成果を「クリックが増えていない」と誤って判定します。

AIの回答での言及を記録する

AIの回答に自社や自社の記事が出ているかは、Search ConsoleにもGA4にも出ません。月に1度、自社の主題に関する質問をChatGPT・Gemini・Claudeに同じ文面で投げ、社名や記事が出たかを記録する方法が、少人数でも続けられる最小の計測です。質問の文面と記録の型は、AIMA BLOGのLLMOのKPIとは?AI検索時代に追うべき指標と効果測定の方法で具体に書かれているので、この記事では深く触れません。

ここで足すのは、月次報告のいちばん下に「AIの回答に出た質問の数」を1行加えることだけです。この行が動き始めると、指名検索数の行が遅れて動きます。2つの行の関係を見ておくと、AIの回答に使われることが事業の数字にどうつながっているかを、推測ではなく記録で説明できます。

KPI運用でよくある失敗

数字が多すぎる

KPIの一覧記事には20を超える指標が並びますが、少人数で追えるのは段階ごとに2つ、合計6つまでです。数字が多いと、毎月の集計に時間を取られて、肝心の「どこが止まっているか」を考える時間が無くなります。最初は段階ごとに1つずつ、3つから始めて、判断に使わなかった数字は翌月から外します。

本数が目的になる

公開本数は、立ち上げ期の行動の数字としては有効ですが、KPIとして長く置くと、本数のために薄い記事が増えます。本数は「月次報告のいちばん下の行」に置き、段階ごとの数字が動いているかを上の行で見る、という位置づけを最初に決めておきます。本数が増えているのに段階の数字が動かないときは、配分表に無い記事が増えていないかを確かめます。

段階をまたいで比べる

解説記事の訪問数と事例ページの訪問数を同じ表に並べ、「事例は読まれていない」と判断する失敗です。段階が違う数字は桁も動き方も違うので、同じ段階の中でしか比べません。比べる相手が無い型は、前月の自分と比べます。

同じ失敗の別の形が、公開から3か月の記事と、2年前の記事を同じ基準で比べることです。公開からの経過月数が違う記事は、同じ段階でも別の行で扱います。

まとめ

コンテンツマーケティングのKPIは、読者の検討段階ごとに分けて置く中間の数字です。気づく段階は表示回数と検索経由の訪問数、比べる段階は事例と資料の閲覧数、決める段階は問い合わせ数と商談化した数で、それぞれ別の行で追います。数字の選び方より「置き場所」が大切で、型に合わない数字を当てた瞬間に、そのコンテンツは失敗に見えます。

決め方は、KGIを1つに絞り、配分表の型ごとに数字を当て、目標値は3か月の実績から置き、道具はSearch Console・GA4・記録簿の3つで足り、報告は段階ごとに3行で1枚にまとめる、の5手順です。AIが回答する時代には、表示回数と訪問数の差、指名検索数、AIの回答での言及の3つを足し、記事のクリックが増えないまま認知が積み上がる動きを見落とさないようにします。

KPIが決まったら、次は数字が動き始めるまでの最初の3か月をどう進めるかです。その期間の進め方はコンテンツマーケティングの始め方|最初の3か月の進め方にまとめてあります。