ホワイトペーパーの事例をBtoB企業10社で見比べると、成果を出している資料は「読者の課題を題名で言い切り、中盤で読者に手を動かさせ、自社の話は最後に短く置く」という同じ構成を持っています。違いは、資料の型と、材料をどこから持ってきたか、そして読者がどこから資料にたどり着くかの3点に集約できます。
事例を集めた記事はたくさんありますが、表紙の画像と資料名を並べただけでは、自社の1本目にどう生かせばよいかが残りません。この記事では、公開されている資料ページから確認できる範囲で、10社の資料の構成を「型」「材料」「入口」の3つの軸で分解し、最後に10社を貫く構成の共通点と、生成AIが普通になった時代に事例から借りるべき条件を整理します。
型の分け方はホワイトペーパーの種類|目的別9つの型と使い分けの決め方の9種を使います。事例を見た後に自社で作る手順はホワイトペーパーの作り方|企画から公開までの8ステップと構成の型にあります。この記事は、その2本の間にある「実物はどうなっているか」を埋める役割です。
事例を分解する3つの見方
型・材料・入口で見る
事例を見るときに、デザインの良し悪しから入ると自社に持ち帰れるものが減ります。代わりに、次の3つを1社ずつ確かめます。
- 型:読者に何を渡す資料か。知識か、自社の事実か、読者が手を動かす道具か
- 材料:その資料は何から作られたか。社内の知識か、専門家の監修か、自社の調査か、顧客の協力か
- 入口:読者はどこから資料に着くか。記事の下か、資料一覧か、フォームの有無はどうか
この3つが分かれば、資料の中身を全部読まなくても「自社が同じものを作れるか」を判断できます。材料が社内にある型なら真似できますし、自社調査や顧客の協力が要る型なら、先に材料を集める段取りが必要です。
10社の一覧
先に全体を1枚の表にします。型の名前は種類の記事に合わせています。
| 会社 | 代表的な資料 | 型 | 材料 | 入口 |
|---|---|---|---|---|
| HubSpot Japan | 営業に関する意識・実態調査2026 ほか | 調査レポート型 | 自社の年次調査 | 資料ライブラリ(絞り込みあり) |
| SmartHR | 年末調整の業務改善チェックリスト ほか | チェックリスト型・法改正解説 | 社労士監修・制度知識 | 資料一覧(サービス紹介と分離) |
| Chatwork | ビジネスチャット比較表 | 検討の手引き型 | 主要4社の比較 | 専用ページ(フォーム) |
| マネーフォワード クラウド契約 | 弁護士監修 電子契約まるわかり4点セット ほか | ノウハウ型・調査レポート型 | 弁護士監修・1,168名調査 | 記事から資料へ(フォーム) |
| Sansan | 新規開拓を妨げる6つの障壁 | ノウハウ型 | 5W1Hの枠組みと営業の知見 | 専用ページ(フォーム) |
| 才流 | BtoBマーケティングテンプレート集 | テンプレート型 | 支援現場の書式 | 記事内公開(フォームなし) |
| ベイジ | BtoBサイトを成功に導く180のチェックリスト | チェックリスト型 | 3社連名の制作知見 | 記事内公開(フォームなし) |
| サイボウズ | kintone DX事例集 | 導入事例型 | 大企業ユーザーの事例 | 専用ページ(フォーム) |
| ferret One | サービスサイトCVR改善の15のチェックリスト | チェックリスト型 | 支援現場の改善項目 | 専用ページ(フォーム)+改善事例の記事 |
| SATORI | デジタルマーケティングハンドブック17点 | 入門ガイド型 | マーケ基礎知識 | 資料一覧(カテゴリ分け) |
10社のうち、フォームなしで記事内に置いているのが2社、フォームの奥に置いているのが8社です。この違いは、後の「AI時代に強い事例の条件」でもう一度取り上げます。
BtoB企業10社の事例
HubSpot Japan:年次調査を軸にした資料ライブラリ
HubSpot Japanの資料ライブラリには、「日本の営業に関する意識・実態調査2026」「マーケティング・トレンド調査2026版」「カスタマーサービス意識・実態調査2026」といった年次の調査レポートが並びます。同じ調査を毎年繰り返し、年号を変えて出し続けているのが特徴です。ガイドやテンプレート、スプレッドシート形式のキットも混ざっていて、トピック・コンテンツ形式・ファイル形式で絞り込めるようになっています。
型で見ると、中心は調査レポート型です。材料は自社で毎年行う調査で、これは他社が真似できない材料にあたります。入口は資料一覧ですが、絞り込みがあるため、目的の資料に自分でたどり着けます。
ここから借りられるのは「同じ調査を毎年続ける」という設計です。1回きりの調査は記事に引用されて終わりますが、年次になると「去年と比べてどうか」という読み方が生まれ、翌年も手に取る理由ができます。規模は小さくてよく、自社の顧客30社に同じ質問を毎年する形でも成立します。
SmartHR:サービス紹介と切り離したノウハウ資料
SmartHRのお役立ち資料は、サービス紹介資料とノウハウ・トレンド資料の2群に分かれています。ノウハウ側には「年末調整がラクになる。業務改善チェックリスト」「社労士監修!実務の”うっかりミス”をゼロに 入社手続きチェックリスト」「2026年年末調整に関わる税制改正まとめ」などが並び、労務担当者が毎年必ずぶつかる業務に題名を合わせています。
型はチェックリスト型と、制度の変更を解説するノウハウ型です。材料は社労士の監修と制度知識で、社内の労務の知見を専門家の名前で裏づけています。入口は資料一覧で、製品の話とノウハウの話を最初から分けているため、まだ製品を探していない読者がノウハウ側だけを見に来られます。
借りられるのは、サービス紹介と課題解決の資料を同じ棚に混ぜないことと、年末調整のように「毎年その時期に必ず調べる業務」に題名を合わせる発想です。季節性のある業務は、資料の賞味期限が毎年更新されます。
Chatwork:比較表を「社内共有用」として渡す
Chatworkのビジネスチャット比較表は、題名に「社内共有にそのまま使える」と付いています。ページに書かれた構成は、会社の課題を洗い出す、ビジネスチャットを選ぶ5つのポイント、Chatworkの機能、主要4社の比較、という順番です。
型は検討の手引き型です。自社を含む4社を並べる比較表を自社で用意しているので、読者は他社の比較記事を探さずに済みます。材料は競合を含む製品比較で、営業が商談で毎回聞かれる「他と何が違うか」を資料にした形です。入口はフォーム付きの専用ページです。
借りられるのは、読者が資料を持ち帰る先を「本人の上司」に置いた設計です。「社内共有にそのまま使える」という一言で、読者は稟議を通すための資料として手に取ります。自社の比較表を自社で作ることに抵抗がある会社は多いのですが、作らなければ他社の比較記事で比べられるだけです。
マネーフォワード クラウド契約:弁護士監修と自社調査の組み合わせ
マネーフォワード クラウド契約のお役立ち資料の紹介ページには、「弁護士監修 電子契約まるわかり4点セット」「電子契約サービス比較マニュアル」「電子契約導入に向けた4つのステップ」「電子契約システム導入後の落とし穴」などが並びます。最後の資料は1,168名を対象にした実態調査の結果を解説するもので、選定時の5つのチェックポイントを載せた比較マニュアルもあります。
型は、弁護士監修のノウハウ型を入口に、比較の手引き型、調査レポート型まで1つの題材で広げた形です。材料は専門家の監修と自社調査の2つで、法律という「間違えると困る領域」で、誰が保証しているかを題名に出しています。入口は、電子契約の記事の中で資料を紹介し、フォームへ送る形です。
借りられるのは、1つの題材を複数の型に展開する順番です。基礎の4点セットで入口を広げ、比較マニュアルで比べている読者に対応し、導入後の落とし穴で決めた後の不安まで受けているので、読者はどの段階で来ても次に読む資料があります。「弁護士監修」という材料の見せ方も、社内の知識だけでは信用が足りない領域で借りられます。
Sansan:営業リーダーの悩みを6つに分ける
Sansanの新規開拓を妨げる6つの障壁 『5W1H』の乗り越え方は、新規開拓がうまくいかない理由を、いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どうやって、の枠組みで6つに分けて整理した資料です。想定読者は営業リーダーで、時間が足りない、提案の仕方が分からない、適した営業人材がいない、といった悩みを入口にしています。
型はノウハウ型です。材料は営業支援の現場で聞く悩みと、誰もが知る5W1Hという枠組みの組み合わせで、枠組みそのものは一般的ですが、それを「新規開拓の障壁」に当てはめた点が資料の中身になっています。入口はフォーム付きの専用ページです。
借りられるのは、読者の悩みを「数」で区切る題名の作り方です。「6つの障壁」と言われると、読者は自分の悩みがそのうちのどれかを確かめたくなります。営業や現場が聞いている悩みを書き出して5〜7個に分けて番号を振るだけで、資料の骨組みができます。枠組みは有名なものでよく、何に当てはめるかで独自性が出ます。
才流:フォームなしで50以上のテンプレートを公開
才流のBtoBマーケティングテンプレート集は、マーケティング情報整理シート、見込み顧客インタビューのひな形、ペルソナ作成、カスタマージャーニーマップ、競合分析シート、ウェビナー運営の工程表、営業資料のひな形、導入事例の管理シートなど、50以上の書式を1ページにまとめたものです。ページには、ダウンロードに個人情報の入力は必要ないと明記されています。
型はテンプレート型です。材料は支援の現場で実際に使っている書式で、各テンプレートには使い方を解説する記事が添えられています。入口は記事内で、フォームがありません。連絡先を集める資料としては機能していませんが、才流を「BtoBマーケティングの方法論を持つ会社」として覚えてもらう資料として働いています。
借りられるのは、書式と解説記事を対にする形です。書式だけ配っても使い方が伝わらず、記事だけでは手が動きません。フォームを外すかどうかは会社の方針によりますが、「書式には解説を添える」という部分はフォームの有無にかかわらず借りられます。
ベイジ:3社連名の180項目チェックリスト
ベイジのBtoBサイトを成功に導く180のチェックリストは、行動を促すボタン、ナビゲーション、ホーム、特徴ページ、サービス紹介、事例紹介、価格、会社情報、セミナー、ブログ、資料ダウンロード、フォーム、その他の13分類に180項目を並べたものです。才流とWACULの2社との連名で公開され、チェックリストのスライド版と、標準的なページ構成のワイヤーフレームが記事内からそのまま入手できます。
型はチェックリスト型です。材料はサイト制作とマーケティング支援の3社の知見で、1社では集めきれない項目数を連名で集めています。入口は記事内で、フォームはありません。記事そのものが180項目を全文載せているので、読者は資料を開かなくても内容を確かめられます。
借りられるのは、他社と連名で作るという材料の集め方です。自社だけでは項目が偏るときに、隣の領域の会社と組むと、項目の数と幅が一度に増え、公開後の告知も分担できます。項目の全文を記事に載せても、スライド版や書式版には「そのまま使える」という別の価値が残ります。
サイボウズ:大企業の事例で「本質」を語る
サイボウズのkintone DX事例集は、日清食品グループや三菱重工といった大企業の導入事例を通じて、DXの本質と陥りやすい課題、今後取るべき戦略を解説する資料です。事例を並べるだけでなく、事例から一般化した「何が本質か」を読者に渡す構成になっています。
型は導入事例型です。材料は顧客の協力で、しかも名前を聞けば誰でも分かる企業が並んでいるため、「あの会社が使っているなら」という安心を読者に渡せます。入口はフォーム付きの専用ページです。
借りられるのは、事例集を「事例+読み解き」で作ることです。事例を並べただけの資料は事例集で、再現できる条件を引き出して初めてホワイトペーパーの事例型になります。この違いはホワイトペーパーとは?マーケティングでの役割と使いどころでも触れました。有名企業の事例がなくても、規模の近い顧客3社の事例に「共通していたこと」を1章足せば、同じ構成になります。
ferret One:4章構成のチェックリストと、作り直しの記録
ferret OneのBtoBのサービスサイトのCVRを改善する15のチェックリストは、目標の設計、現状の分析、15項目の改善ポイント、より上流の要因、という4章で組まれています。想定読者は「自社のサイトの改善点が結局どこなのか分からない」BtoBのマーケティング担当者で、フォームには姓名・メールアドレス・会社名・電話番号・業種の項目があります。
型はチェックリスト型ですが、15項目を並べる前に目標と現状の章を置いている点が特徴です。項目だけ渡されても、どこから手をつけるかは読者が決められません。目標との差を先に見せることで、15項目のうちどれが自社の優先かを読者が判断できる作りになっています。
もう1つ、ferret Oneは自社のホワイトペーパー12冊を作り直した記録を記事として公開しています。縦長のA4から横長のスライド判型へ変え、1ページの文字数を減らして図を増やし、想定読者を絞り直し、資料ごとに末尾の誘導を変えた結果、サービスサイトへの遷移が12倍、そこからの問い合わせが2.5倍になったと書かれています。借りられるのは、資料の作り直しそのものを記事にする発想です。改善の記録は、それ自体が読者の役に立つ事例になります。
SATORI:入門ハンドブックを17点そろえる
SATORIのお役立ち資料は、サービス紹介、活用方法、マーケティングオートメーション、デジタルマーケティングハンドブックの4カテゴリに分かれ、ハンドブックだけで17点あります。基礎編、SEOとWeb解析、営業戦略、BtoBマーケティング戦略、フレームワーク、インサイドセールス、セミナー運営、メールマーケティング、展示会、そしてホワイトペーパーのテンプレートまで、マーケティングの入門テーマを一通り押さえています。
型は入門ガイド型が中心です。材料はマーケティングの基礎知識で、自社にしかない事実というより、分野の全体像を整理して渡しています。入口はカテゴリ分けされた資料一覧で、製品資料とハンドブックが最初から別の棚にあります。
借りられるのは、入門テーマを「面」でそろえる考え方です。1本では薄く見えても、17点並ぶと「この分野を教えてくれる会社」という印象になります。ただし入門ガイド型は生成AIの要約と最も競合する型でもあるため、各ハンドブックに自社の見方や現場の優先順位を足す必要があります。
10社に共通する構成の作法
題名で読者の課題を言い切る
10社の資料名を並べると、製品名が題名の先頭に来ている資料はほとんどありません。「年末調整がラクになる」「新規開拓を妨げる6つの障壁」「サービスサイトのCVRを改善する」と、読者の課題や動作が先に来ています。製品名は資料の中で、解決の手段として最後に出てきます。
読者が資料を手に取る瞬間には、まだ製品を探していないからです。題名が製品名だと、その製品を候補に入れた人しか手を伸ばしません。この考え方はホワイトペーパーの書き方|めくる読者に届く文章の作法と推敲の手順でも扱っていますが、10社の実物を見ると例外がほとんどないことが分かります。
中盤で読者に手を動かさせる
チェックリスト型が10社のうち3社、テンプレート型が1社、比較表が2社あります。ノウハウ型や調査レポート型に見える資料でも、5W1Hの枠組みや選定の5つのチェックポイントのように、読者が自社に当てはめて考える箇所が中盤に置かれています。読んで終わる資料より、読みながら自社の状態を書き込める資料のほうが、読者にとって持ち帰るものが残ります。
自社で作るときは、目次を決めた段階で「読者が手を動かすページはどこか」を1つ決めます。判定表でも、記入欄でも、比較の空欄でもかまいません。
段階ごとに次の資料がある
マネーフォワードの電子契約は、基礎の4点セット、比較マニュアル、導入の4ステップ、導入後の落とし穴と、検討の段階ごとに資料が用意されています。SmartHRは製品を探す前の人向けのノウハウ資料と、製品を候補に入れた人向けのサービス紹介を分けています。1本の資料で全部を担わせず、段階ごとに1本ずつ置くのが共通の作法です。
最初から複数の資料を作れという意味ではありません。1本目を読んだ人が次に知りたいことを2本目にする、という順番の話です。順番の決め方は種類の記事の「最初の3本」の項に書いてあります。
資料の外にも中身を置く
ベイジは180項目の全文を記事に載せ、才流はテンプレートごとに解説記事を添え、ferret Oneは資料の作り直しの経緯を記事にしています。資料の中身をすべて隠すと、その資料の存在を知る手段が広告か営業しかなくなります。要点や目次を記事に出し、詳細や書式を資料に残す二層の分け方は、10社の多くが何らかの形で取っています。
AI時代に強い事例の条件
一般論だけの資料はAIの要約に負ける
読者は今、資料をダウンロードする前に生成AIに聞きます。「ビジネスチャットの選び方」「新規開拓がうまくいかない理由」といった一般的な問いなら、AIの答えでかなり足ります。10社の中で、この影響を最も受けやすいのは入門ガイド型のハンドブック群で、基礎知識を整理しただけの資料は、連絡先を渡してまで読む理由が薄くなっています。
逆に、HubSpotの年次調査、マネーフォワードの1,168名調査、サイボウズの大企業の事例、ベイジと才流の現場の書式は、AIに聞いても出てきません。事例から借りるべきなのは、資料の見た目ではなく、AIが持っていない材料をどこから持ってきたかです。10社の材料を並べ直すと、自社調査、専門家の監修、他社との連名、顧客の協力、現場の書式の5つに分かれます。自社で作るときは、この5つのどれを使えるかを最初に確かめます。
監修と連名は「誰が保証するか」を足す
SmartHRの社労士監修、マネーフォワードの弁護士監修、ベイジの3社連名に共通するのは、資料の中身を「誰が保証しているか」を題名や公開の形で示していることです。AIの答えには保証する人がいません。同じ内容でも、名前のある専門家や複数の会社が責任を持って出している資料には、読者が手に取る理由が残ります。
自社だけでは信用が足りない領域で資料を作るなら、監修者か連名の相手を先に決めます。費用がかかっても、資料の価値の大半はそこで決まります。
フォームを外すという選択
才流とベイジは、フォームなしで資料を公開しています。連絡先を集めるという役割を捨てる代わりに、記事と資料の全文が検索とAI検索に読まれ、「この分野の方法論を持つ会社」として名前が出る面を取っています。フォームの奥にあるPDFの中身はAI検索に読まれないので、AIの回答に自社の考え方を出したいなら、少なくとも一部はフォームの外に置く必要があります。
全部を外す必要はありません。獲得に使う資料はフォームの奥に、名前を覚えてもらう資料はフォームの外に、という分け方が現実的です。
作り直しの記録も事例になる
ferret Oneの12冊の作り直しは、資料そのものではなく「資料をどう直したか」を公開した事例です。AIは一般的な改善の手順は書けますが、特定の会社が実際に何をどう変えて、どうなったかは書けません。自社の資料を作り直したときは、その経緯を記事にすると次の題材になります。数字が小さくても、条件つきで正直に書かれた記録は、読者にとって一般論より役に立ちます。
自社で1本目を再現する手順
材料を5つのどれかで決める
事例から借りる順番は、型ではなく材料からです。自社調査、専門家の監修、他社との連名、顧客の協力、現場の書式の5つのうち、今すぐ使えるものを1つ選びます。多くの会社では、現場の書式か営業が毎回説明している知識が最初に見つかります。それならチェックリスト型かノウハウ型が1本目です。
顧客の協力が得られるなら事例型、業界にアンケートを取れるなら調査レポート型に進めます。材料が決まると、10社のうちどの事例を手本にするかが自然に絞られます。
手本にする事例の構成を写す
型が決まったら、同じ型の事例の構成を骨組みとして写します。チェックリスト型ならferret Oneの「目標→現状→項目→上流要因」の4章を、ノウハウ型ならSansanの「悩みを数で区切って番号を振る」形を、比較表ならChatworkの「課題の洗い出し→選ぶ基準→自社→他社比較」の順番を借ります。構成を写すのは骨組みまでで、中身は自社の材料で埋めます。
ページごとの書き込み欄つきの見本はホワイトペーパーのテンプレート|型別5種の構成見本とAIへの渡し方にあります。事例の構成と見本を突き合わせると、自社の1本目の目次は1時間ほどで決まります。
入口と置き場所を先に決める
資料を書き始める前に、読者がどこから資料に着くかを決めます。関連する記事の下に置くのか、資料一覧に並べるのか、営業が商談で渡すのか。フォームを付けるかどうかも、この段階で決めます。入口を決めずに資料だけ作ると、資料一覧の奥に置かれて誰にも見つからない、という状態になりがちです。10社に共通するのは、資料の中身と同じくらい置き場所が設計されていることです。
3か月見て、次の1本を決める
公開したら、少なくとも3か月は数字を見ます。見る数字はダウンロード数だけでなく、置いた記事の閲覧に対するダウンロードの割合と、その後に営業に渡せた件数です。ダウンロードはあるのに営業に渡せないなら、マネーフォワードのように比べている段階の資料を足します。ダウンロード自体が少ないなら、題名か置き場所を直します。事例から借りるのは構成と材料の集め方までで、あとは出して直す繰り返しです。ferret Oneが12冊を作り直したように、最初の資料は直す前提で出してかまいません。
まとめ
BtoB企業10社のホワイトペーパーを、型・材料・入口の3つの軸で分解しました。年次調査、監修つきチェックリスト、比較表、テンプレート集、連名のチェックリスト、事例集、入門ハンドブック群と型は違っても、題名で課題を言い切り、中盤で読者に手を動かさせ、段階ごとに次の資料を用意し、資料の外にも中身を置くという作法は共通していました。
生成AIが一般論を答える時代に事例から借りるべきなのは、見た目ではなく材料の集め方です。自社調査、専門家の監修、他社との連名、顧客の協力、現場の書式のどれを使えるかを最初に決め、同じ型の事例の構成を骨組みとして写し、入口と置き場所を先に決めてから書き始めてください。型の選び方はホワイトペーパーの種類|目的別9つの型と使い分けの決め方に、企画から公開までの手順はホワイトペーパーの作り方|企画から公開までの8ステップと構成の型にまとめてあります。