コンテンツマーケティングを始める最初の3か月は、記事を書きためる期間ではなく、「誰のどの疑問に答えるかの表」「公開する場所」「問い合わせを受ける事例と会社情報のページ」の3つをそろえて、自社が月に何本を続けられるかを確かめる期間です。この3つがそろった状態で4か月目を迎えられれば、始め方としては成功です。
始め方を説明する記事の多くは、目的の設定から計測までを5段階から7段階の手順で示します。手順そのものは正しく、当サイトの入門記事コンテンツマーケティングとは?AI時代の始め方を5ステップで解説でも同じ骨組みで説明しています。ただ、手順の一覧は「何をするか」は教えてくれても、「今週は何をするか」「3か月目の終わりに何ができていればよいか」までは教えてくれません。兼任の担当者が1人で始める会社では、この日程の空白がそのまま停滞になります。目的を決める会議が延び、サイトの器を選ぶのに1か月かかり、3か月たって公開された記事が2本、読んだ人はほぼ社内だけ、という形で止まります。
この記事は、5段階の手順を、担当者1人が実際に動ける最初の3か月の日程に置き直したものです。3か月で到達する状態、1か月目の土台づくり、2か月目の受け皿の公開、3か月目の数字の見方と続け方の判断、生成AIを使うときに任せる範囲と任せない範囲、3か月の間によく起きるつまずきの順に進みます。目的や読者の決め方そのものを詳しく知りたい場合は、同じテーマ群のハブ記事コンテンツマーケティングの戦略|1枚の配分表で決める手順を先に読むと、この記事の1か月目がそのまま配分表を作る作業になります。
最初の3か月で決まること
到達点は3つだけ
3か月目の最終日に、次の3つができていれば、始め方としては十分です。
| 到達点 | 具体的な状態 | できていないとどうなるか |
|---|---|---|
| 配分表 | 誰の・どの検討段階の疑問に・どの型で答えるかが1枚にある | 企画を毎回ゼロから考え、書き手が止まる |
| 公開する場所 | 記事と事例を自社の管理下で公開でき、検索エンジンに登録済み | 書いても読まれる場所がなく、資産にならない |
| 受け皿 | 事例ページが数本、会社情報とよくある質問が最新 | 読者が来ても次に進む先がなく、帰ってしまう |
ここに「記事を何本公開した」は入っていません。3か月目の時点で検索から人が来ている必要もありません。公開したページが検索結果に出るまでには時間がかかり、Googleの公式文書でも、クロール(検索エンジンがページを読みに来ること)には数日から数週間かかると書かれています(Google 検索セントラル「Google にページの再クロールをリクエストする」)。登録された後に順位がついて人が来るまでは、さらに先の話です。3か月で検索流入を到達点に置くと、努力と関係なく未達になり、そこで打ち切りの話が出ます。
記事から書き始めない
始めたい気持ちが強いほど、1か月目から記事を書きたくなります。しかし最初の3か月で記事を書きためることは勧めません。理由は2つあります。
1つは、記事は人を連れてくる役目であり、連れてきた先に事例や会社情報の受け皿がなければ、集めた人が問い合わせに進まないことです。もう1つは、配分表がない状態で書いた記事は、後から見返すと誰のどの疑問に答えたのか分からず、書き直しになることです。先に受け皿と表を作り、記事は2か月目の終わりに1本だけ、型を試す目的で書きます。
始める前に決める2つ
日程を組む前に、2つだけ決めておきます。
- 担当者が週に何時間を使えるか。兼任なら、週4時間と見積もるのが現実的な出発点です。この時間が、月に作れる本数の上限を決めます
- 決裁者と、3か月目の到達点を合意しておくこと。「3か月で問い合わせが増える」ではなく、上の表の3つができていれば合格、と先に書面で確認します
2つ目を飛ばすと、3か月目の報告で「で、問い合わせは何件増えたの」と聞かれ、答えられないまま終わります。最初に期待値を下げておくことが、続けるための最大の保険です。
1か月目:土台をそろえる
1か月目は、何も公開しません。表と場所と素材をそろえる月です。週ごとに1つの作業に絞ります。
1週目:目的と読者を1行で
目的は、問い合わせを増やす、社名で探してもらう、採用の応募を増やすの3つのどれかに決めます。1つに絞ると、読者が1種類に決まります。問い合わせが目的なら、読者は発注を検討している人です。
この週に作るのは、次の1行だけです。「○○業の○○担当者が、△△で困って外注先を探しているときに、うちを知って問い合わせてもらう」。人物像の資料を作る必要はありません。この1行が、2週目以降の全ての判断の基準になります。
2週目:疑問を30個集める
読者がその状況で調べることを、30個を目安に集めます。集め先は社内にあります。
- 営業が商談の最初に聞かれる質問
- 問い合わせフォームやメールに書かれていた文面
- 検索窓に自社の商材の言葉を入れたときに出る候補
- 失注したときに相手が口にした理由
集めた疑問を、「困りごとに気づいた段階」「比べている段階」「決める直前の段階」の3つに振り分けます。少人数の会社では、「決める直前」の疑問が最も価値があり、ここに「同じ規模の会社の結果が知りたい」「失敗したら戻せるか」が入ります。
3週目:配分表と公開場所
2週目の疑問に、答える型を当てます。事例ページ、会社情報とよくある質問、比較表、ダウンロード資料、記事の5つで足ります。疑問1つに型1つを当て、段階ごとに1行ずつ書いたものが配分表です。表の作り方の細部はコンテンツマーケティングの戦略|1枚の配分表で決める手順に手順があります。
同じ週に、公開する場所を決めます。既にコーポレートサイトがあるなら、その中に事例とお役立ち情報の置き場を作るのが最短です。新しくオウンドメディアを立てる判断は、記事が10本以上たまり、月に続けられる本数が見えてからで遅くありません。器を新しく作る場合の選び方と手順はオウンドメディアの作り方|立ち上げ7ステップと運用の型にまとめてあります。器の選定は1週間で決め切ります。ここで1か月使う会社が多く、それが最初のつまずきになります。
4週目:受け皿の下書き
配分表の「決める直前」の行から、下書きを始めます。最初に作るのは事例ページです。既存の顧客に、取材を依頼する連絡を4週目に出します。承諾から取材、原稿の確認までに数週間かかるため、ここで連絡を出しておかないと2か月目に公開できません。
取材できる顧客が見つからない場合は、社名を出さない形で「業種・規模・困りごと・やったこと・結果」の5項目だけを書いた事例から始めます。顧客の実名と写真があるほうが強いのは確かですが、無いことを理由に2か月目を空けるほうが損失です。
2か月目:受け皿から公開する
2か月目は、公開する月です。順番は、事例、会社情報とよくある質問、記事1本の順で、記事は最後です。
事例ページを先に3本
1か月目に取材を依頼した事例を、3本を目標に公開します。1本の構成は、相手の状況、困りごと、選んだ理由、やったこと、結果、担当者の言葉の6項目で固定します。構成を固定すると、2本目以降の制作時間が半分になり、読者も比べて読めます。
事例が商談でどう使われ、どう成果につながるかはコンテンツマーケティングの成功事例10選|BtoB中心に成功の型を解説で分解しています。10社に共通するのは、記事の本数ではなく、読者が読んだ後に進む先が用意されていることです。
会社情報とよくある質問を直す
事例と並行して、会社情報のページと、よくある質問のページを直します。直す観点は1つで、「決める直前の疑問に答えているか」です。
- 対応できる地域と規模が書いてあるか
- 発注から納品までの流れと期間が書いてあるか
- 途中でやめた場合にどうなるかが書いてあるか
- 担当者の顔か名前が出ているか
よくある質問は、2週目に集めた疑問のうち、営業が毎回答えているものを10個ほど選んで、答えをそのまま書きます。新しく考える必要はなく、営業が口頭で答えている内容を文字にするだけです。
記事は型を決めて1本
2か月目の後半に、記事を1本だけ書きます。狙いは本数ではなく、自社の記事の型を決めることです。型とは、見出しの立て方、1本の長さ、文体、画像の使い方、記事の最後に事例へつなぐ一文、といった決まりごとです。
1本目は、配分表の「比べている段階」の行から選びます。「○○の外注と内製の違い」「○○を選ぶときに見る5つの点」のような、営業が商談で毎回説明している比較の話が向いています。社内に答えがあるので事実確認が速く、書き上がったものを営業がそのまま商談で渡せるからです。
書き終えたら、かかった時間を記録します。この時間が、3か月目に月の本数を決める根拠になります。
検索エンジンに登録する
公開したページを検索エンジンに知らせる作業を、2か月目のうちに済ませます。Google Search Console(グーグル サーチ コンソール。自社サイトが検索でどう扱われているかを無料で見られる道具)に自社サイトを登録し、サイトマップ(サイト内のページ一覧のファイル)を送信します。前述のとおり、登録されるまでには数日から数週間かかるため、3か月目に数字を見るには2か月目に登録しておく必要があります。
同じタイミングで、GA4(グーグル アナリティクス 4。訪問者の動きを見る道具)で問い合わせの完了を計測できるようにしておきます。3か月目の数字は、この2つの道具から読みます。
3か月目:数字を見て続け方を決める
3か月目は、2か月目に出したものの続きを作りながら、初めて数字を見て、4か月目以降の続け方を決める月です。
最初に見る3つの数字
3か月目に見る数字は3つに絞ります。
| 数字 | 見る場所 | 読み方 |
|---|---|---|
| 登録されたページ数 | Search Console の「ページ」 | 公開したページが検索の対象になったか |
| 表示回数と表示された検索語 | Search Console の「検索パフォーマンス」 | どんな言葉で、どのページが出始めたか |
| 事例ページを見た後の問い合わせ | GA4 の経路 | 受け皿が機能しているか |
問い合わせの件数そのものは、まだ見ません。見ても動いていないのが普通で、動いていないことを失敗と読んでしまうからです。立ち上げ期に追うべき数字と、見てはいけない数字の線引きはオウンドメディアのKPI|立ち上げ期に追う数字と段階別の切り替えに詳しく書きました。記事サイトに限らず、始めたばかりのコンテンツ全般に同じ線引きが使えます。
90日目の報告は1枚
3か月目の終わりに、決裁者へ1枚で報告します。載せるのは、最初に合意した3つの到達点の達成状況、公開したページの一覧、上の3つの数字、営業が商談で使ったページとその反応、4か月目からの本数の案です。
営業が商談で使ったページの反応は、この時点で最も説得力のある材料です。検索の数字がまだ小さくても、「事例ページを渡したら次の打ち合わせが早く決まった」という事実があれば、続ける理由になります。報告の前に、営業に「渡したか、相手は何と言ったか」を聞いておきます。
続ける・直す・やめるの基準
4か月目以降の判断は、3つに分かれます。
- 続ける: 3つの到達点ができていて、営業が公開したページを使っている。本数は2か月目に記録した制作時間から逆算し、月2本など続けられる量に固定する
- 直す: 到達点はできているが、営業が使っていない。配分表の疑問と営業の現実がずれているので、2週目の疑問集めをやり直す
- やめる: 担当者の時間が週2時間も確保できなかった。この場合は手法の問題ではなく体制の問題なので、記事を増やしても解決しない。時間が確保できる形に組み替えてから再開する
「やめる」を基準に入れておくことは、続けるための準備です。やめる条件が明文化されていると、それに該当しない限り続ける、という合意が成り立ちます。
AI時代の始め方で変わったこと
生成AIが文章を書けるようになり、始め方の手順の中で、変わった部分と変わらない部分がはっきり分かれました。
下書きはAIで、素材は社内で
変わったのは、文章にする作業の時間です。事例ページも記事も、取材の録音や営業の説明を渡せば、生成AIが下書きを出します。1か月目から2か月目にかけて、担当者1人で事例3本と記事1本を公開できるのは、この下書きの速さがあるからです。
変わらないのは、素材を持っているのが社内だけだという点です。顧客の困りごと、選ばれた理由、失注の理由、商談で聞かれる質問は、生成AIには分かりません。2週目の疑問集めと4週目の取材は、AIに任せられない作業として日程に残ります。3か月の中で担当者が時間を使うべきなのは、この素材集めです。
AIに聞く読者の受け皿
もう1つ変わったのは、読者が検索の前に生成AIに質問するようになったことです。「○○業向けの○○を扱っている会社」とAIに聞き、その回答に自社が出るかどうかが、検索結果に出るかどうかと並ぶ入口になりました。
始めたばかりの会社がここで有利なのは、AIの回答に使われやすいのは、事実が明確に書かれたページだという点です。対応地域、規模、流れ、期間、料金の有無、担当者名を会社情報とよくある質問に書くという2か月目の作業は、そのままAIに読まれる準備になります。記事を書きためるより先に受け皿を直す順番は、AIに聞く読者が増えたことで、さらに理にかなった順番になりました。AIの回答に自社を出すための具体的な対策は、このサイトの領分ではなくAIMA BLOG側の主題なので、必要になった段階でAIO対策のやり方を参照してください。
最初の3か月で任せないこと
3か月の中で、生成AIに任せると後で困る作業が3つあります。
- 配分表の疑問を考えさせること。AIが出す疑問は一般論で、自社の読者が実際に口にする言葉とずれます
- 事例の結果を書かせること。数字や期間は顧客に確認した事実だけを書き、AIが補った表現はすべて消します
- 公開前の最終確認。事実と表現の責任は社内の人が持ちます。確認する人を1人決め、その人が読むまで公開しない決まりにします
この3つを人が持っている限り、下書きをAIに任せても品質は崩れません。逆にこの3つまで任せると、量は増えても営業が使えないページになります。
3か月でよく起きるつまずき
器の選定で1か月が溶ける
最も多いのが、どのサービスでサイトを作るか、どのデザインにするかの検討に1か月使う例です。3週目に決め切ると書いたのは、このためです。既存のサイトに置き場を作る案を第一候補にし、新しい器は記事がたまってから、という順番にすると、この1か月が戻ってきます。
公開前の確認が止める
事例の原稿が顧客の確認待ちで止まる、社内の確認者が忙しくて読まれない、という形で2か月目の公開が遅れます。対策は日程の側にあります。顧客への確認依頼には返信の期限を添え、社内の確認は毎週決まった曜日の30分に固定します。確認の仕組みを4週目に作っておくと、2か月目に止まりません。
本数が報告の中心になる
3か月目の報告で、公開した本数だけが並ぶ形になると、4か月目から本数を増やす話になり、質が落ちて営業が使わなくなります。報告の中心は到達点と営業の反応に置き、本数は続けられる量の確認として添える程度にします。
始めたばかりの時期は、少ないページが営業で使われている状態のほうが、多いページが誰にも使われていない状態より、はるかに良い出発点です。3か月目にその出発点に立てていれば、記事の本数は4か月目から続けられる量で積んでいけます。
まとめ
コンテンツマーケティングの始め方は、記事を書き始めることではなく、最初の3か月で配分表、公開する場所、問い合わせの受け皿の3つをそろえ、月に続けられる本数を確かめることです。1か月目は何も公開せず、目的と読者を1行にし、疑問を30個集め、配分表と場所を決め、事例の取材を依頼します。2か月目は事例3本と会社情報、よくある質問を先に公開し、記事は型を決めるために1本だけ書き、検索エンジンへの登録を済ませます。3か月目は登録数、表示回数、事例からの問い合わせの3つだけを見て、営業の反応とともに1枚で報告し、続ける・直す・やめるを決めます。
生成AIで下書きの時間は短くなりましたが、疑問集めと取材と最終確認は社内の人の仕事として残ります。この3か月の日程をそのまま使い、4か月目に3つの到達点がそろっていれば、記事はそこから続けられる本数で積み上げていけます。