Googleの新AIでロボットが全身作業 導入前に知る実力と限界

- Google DeepMindは、歩く、かがむ、物をつかむ動作を一つのAIで制御するGemini Robotics 2を発表した
- 複数ロボットの分担や、インターネットなしで動く軽量版も示したが、細かな手作業の成功率は32〜92%と差が大きい
- 一般企業が今すぐ完成品を買える発表ではなく、まずは定型作業を小さく試し、人の立ち入りと安全停止を別の仕組みで守る段階だ
Googleがロボットを「足から指先まで」動かす新AI
Google DeepMindは2026年7月30日、ロボット向けAIの新世代となるGemini Robotics 2を発表しました。これまでのモデルは主に人型ロボットの上半身と机の上の作業を扱っていましたが、新モデルは歩行、しゃがむ、手を伸ばす、物を運ぶといった全身の動きをまとめて制御します。
Gemini Robotics 2は、カメラ映像と人の指示を受け取り、ロボットの動きへ変換するAIです。専門用語では「VLA(視覚・言語・動作モデル)」と呼ばれます。Googleは、人型ロボットApollo 2が「じょうろを下段の緑色の箱へ入れて」という指示を受け、歩いて物を取り、棚へ運ぶ例を公開しました。
Gemini Robotics 2は、人型ロボット全体を足から指先まで制御でき、両腕型ロボットにも対応します。
出典:Google DeepMind公式発表(原文を日本語訳)
重要なのは、ロボットごとに完全に別のAIを一から作る方向から、共通のAIを複数の機体へ適応させる方向へ進んだことです。Googleは同じモデルを、異なる手を付けた2種類のApollo 2と、2本のロボットアームFranka Duoで試しています。
3つのAIが「考える・動く・機器内で動く」を分担
今回の発表は一つの製品ではなく、役割が異なる3モデルで構成されます。Gemini Robotics 2は実際の動作を担当し、Gemini Robotics ER 2は高い位置から作業の順番を考える「頭脳」を担当します。On-Device 2は、通信の遅れやネット切断を避けるため、ロボット本体の機器内で動く軽量版です。
| モデル | 役割 | 現在の提供範囲 |
|---|---|---|
| Gemini Robotics 2 | 映像と指示を手足の動きへ変換 | 早期利用パートナーのみ |
| Gemini Robotics ER 2 | 作業を分解し、進み具合を見て次の動作を決める | Gemini APIとGoogle AI Studioで一般提供 |
| Gemini Robotics On-Device 2 | ネットを介さず機器内で動作 | 選ばれたテスターのみ |
ER 2は数分にわたる作業で数百回の判断を行い、途中で失敗するとやり直し、複数のロボットへ仕事を分けられると説明されています。たとえば、移動が得意なロボットと細かな手作業が得意なロボットが、同じ目標を共有して作業を引き継ぐ形です。
On-Device 2は、形、センサー、動かせる関節が大きく異なる新しい両腕型ロボットにも、数時間、通常200例未満の追加データで適応できるとGoogleは報告しています。ただし、これはGoogleの試験結果であり、どの会社のどのロボットでも同じ時間で使えるという保証ではありません。
派手な動画より重要な「成功率」を確認
公開動画だけを見ると、人と同じように何でもできる段階に見えます。しかし、Googleが同じ発表で示した成功率を見ると、得意な作業と苦手な作業がはっきり分かれています。一般企業が導入を考えるときは、最も良い実演ではなく、自社の作業に近い成功率を見る必要があります。
| 試験した作業 | 公式成功率 |
|---|---|
| 棚から物を取る全身作業 | 76.3% |
| 床から物を取る全身作業 | 45.7% |
| 道具をそろえる作業(二本指グリッパー) | 78.9% |
| 物を正確に差し込む作業(二本指グリッパー) | 89.6% |
| 電球を外す作業(五本指) | 92% |
| 電球を付ける作業(五本指) | 36% |
| ちり取りを扱う作業(五本指) | 32% |
| 保存袋を閉じる作業(五本指) | 40% |
全身作業と二本指グリッパーでは中〜高い成功率に達した一方、多指の細かな操作は依然として難しい課題です。
出典:Google DeepMind公式発表・評価結果(原文を日本語訳)
電球を外す成功率が92%でも、付ける作業は36%です。見た目が似た作業でも、位置合わせや力加減が違えば成績は大きく変わります。Google自身も、動作速度と人間並みの細かさには改善が必要だと明記しています。
「人員削減」より先に起きる変化
AI深報は、今回の3モデル、公式の8種類の作業成績、提供条件を横に並べました。そこから見える最初の変化は、ロボットが人の仕事を丸ごと置き換えることではなく、これまで専用機を作り込まないと難しかった作業を、共通AIへ指示して試しやすくなることです。
成功率が約3〜9割とばらつく現状では、失敗が事故や大損につながる仕事を無人で任せるのは早すぎます。一方、部品の仕分け、道具の準備、片付け、巡回のように、失敗を人が直せて、作業場所を区切れる仕事なら検証の候補になります。最初の費用対効果は「何人減らせるか」ではなく、「人が危険な場所へ入る回数」「待ち時間」「夜間の単純作業」をどれだけ減らせるかで測る方が現実的です。
| 導入判断 | 向いている条件 | まだ避ける条件 |
|---|---|---|
| 仕事 | 繰り返しが多く、失敗しても戻せる | 一度の失敗で人命・高額設備へ影響 |
| 場所 | 人と分離でき、物の位置を整えられる | 人が頻繁に入り、状況が毎回大きく変わる |
| 評価 | 自社現場で数百回試し、失敗の型を記録 | メーカーの成功動画だけで判断 |
| 運用 | 停止装置、監視、人の復旧担当を用意 | AIの安全判断だけへ依存 |
複数ロボット連携も、すぐに無人工場が実現するという意味ではありません。作業の受け渡しが増えるほど、どちらが失敗したか、誰が停止判断をするか、通信が切れたとき何をするかを決める必要があります。共通AIで管理しやすくなる面と、一つの判断ミスが複数機へ広がる面の両方があります。
安全機能は進歩したが、単独では任せられない
Googleは、ER 2が近くの人を検知し、必要に応じて安全停止を呼び出す能力を改善したと説明しています。また、できない作業を見分け、人へ助けを求める能力を測る新しい安全試験ASIMOV-Agenticも公開しました。
ただし、モデルカードには重要な制限があります。ER 2を医療、交通など、誤作動が死亡、けが、物損につながる安全上重要な仕事へ使わないよう求めています。On-Device 2も、主にその場に立った両腕型ロボットで評価されており、移動ロボットや全身制御の危険は現在の評価範囲外です。
利用者は本番・商用・公共環境への利用前に慎重に判断し、医療や交通などの安全上重要な用途へ使ってはいけません。
出典:Gemini Robotics ER 2モデルカード(原文を日本語訳)
企業側では、AIとは別に、接触を防ぐ柵やセンサー、速度と力の上限、非常停止、通信切断時の安全動作を用意する必要があります。GoogleのOn-Device 2モデルカードも、高い位置のAI、安全な経路を作る制御装置、機体ごとの物理的安全機構を重ねる方法を推奨しています。
一般企業が今確認する5項目
第一に、自社の作業を「移動」「物を見つける」「つかむ」「運ぶ」「差し込む」のように分けます。一連の仕事全体ではなく、どの動作で失敗すると危険かを先に見つけます。第二に、成功率だけでなく、100回中の失敗が何だったか、復旧に何分かかったか、人が何回介入したかを記録します。
第三に、人の立ち入り、非常停止、速度・力の制限はAIから独立させます。第四に、クラウド型と機器内型の違いを確認します。通信が切れても止められない仕事では機器内処理が重要ですが、On-Device 2は現時点で選ばれたテスターに限られます。第五に、導入費、保守、現場変更、教育、停止時間を含む総費用で、人の作業と比較します。
今回一般公開されたのは主に「考える頭脳」のER 2です。実際に人型ロボット全体を動かすVLAと機器内版は早期利用者向けで、価格も公式発表には示されていません。一般企業が明日から完成品を購入できる発表ではない点に注意が必要です。
注意点と今後の確認事項
公開された成功率はGoogle自身の評価で、すべての試験回数、現場条件、他社による独立検証は今回の発表だけでは確認できません。作業ごとに対象機体も異なるため、92%と32%を同じ条件の単純比較として扱うこともできません。
また、ER 2の進捗分類は57.4%、重要な瞬間を見つける試験は91.3%と、見る対象によって成績が異なります。ロボットが「終わった」と誤認する可能性を前提に、人や別のセンサーで完成を確認する設計が必要です。
実演映像だけでは導入可否を判断できません。公式の作業別成功率、3モデルの提供範囲、モデルカードの禁止用途を合わせて見ると、一般企業が試してよい仕事と、まだ避けるべき仕事を分けられます。価格や日本向け機体、事故時の責任分担は未発表です。
※ 本記事は公開時点の一次情報にもとづいています。最新の状況は出典をご確認ください。
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監修者:水間 雄紀
株式会社AIMA 代表取締役
1986年和歌山県生まれ、近畿大学卒。金融機関、経営コンサルティング会社を経て、2018年にコンテンツ制作の専門会社である株式会社circlizeを創業。2024年、ラグザス株式会社に事業譲渡。現在は株式会社AIMAにてAI×マーケティング事業に従事し、株式会社ラグザス・クリエイトでコンテンツの品質管理責任者を務める。
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