AIを自社で動かす選択肢に追い風 50団体が過度な規制に反対

- MicrosoftやNVIDIA、OpenAI、Googleなど50団体が、会社が自分で動かせるAIへの過度な規制を避けるよう米国の政策担当者へ要望した
- AI深報が公式2資料を比べると、7月24日付PDFの35団体から現行Web版は50団体へ増え、Googleなど15団体が加わっていた
- 選択肢や価格競争、機密データを社外へ出さない運用には追い風だが、公開後の回収が難しく、導入企業自身の安全管理は重くなる
何が発表されたのか
Microsoft、NVIDIA、Meta、OpenAI、Googleなどは2026年7月24日、共同書簡「Open Weights and American AI Leadership」を公開しました。米国の政策担当者に対し、オープンウェイトAIへの早すぎる一律規制を避け、計算資源や共通の学習用資産へのアクセスを広げるよう求めています。
オープンウェイトAIとは、AIの学習結果に当たる「重み」を入手し、自社の設備や契約したクラウドで動かしたり、用途に合わせて調整したりできるAIです。中身のすべてが公開された「オープンソース」と同じとは限りませんが、提供会社の画面やAPIだけで使う閉じたAIより、利用企業が運用場所や調整方法を選びやすくなります。
Open weight models—AI models that anyone can download, inspect, modify, and run on their own infrastructure—are an important part of that foundation.
出典:Microsoft「Open Weights and American AI Leadership」
署名は35団体から50団体へ増加
AI深報は、同じ7月24日付のNVIDIA版PDFと、Microsoftの現行Web版を照合しました。NVIDIA版PDFには35団体、MicrosoftのWeb版には50団体が掲載されており、Web版の方が15団体多い状態です。
| 確認した公式資料 | 掲載団体数 | 主な署名 |
|---|---|---|
| NVIDIA版PDF | 35団体 | Microsoft、NVIDIA、Meta、OpenAI、IBM、Hugging Faceなど |
| Microsoft現行Web版 | 50団体 | 上記にGoogle、AMD、Cloudflare、Ollamaなどを追加 |
Web版だけに掲載されているのは、AI21、AMD、AMP、Baseten、Block、Cloudflare、Genspark、Google、Inferact、Interconnects AI、Morph、Nebius、Ollama、Periodic Labs、Trajectoryの15団体です。つまり、公開直後の報道だけを見ると「署名していない」と見える企業が、その後の公式一覧では署名済みになっている場合があります。
一方、AnthropicはAI深報が確認した現行Web版50団体にも掲載されていません。ただし、署名していない理由や、書簡の各主張への賛否は公式資料に書かれていないため、未署名だけを根拠に同社の立場を断定することはできません。
会社にとっての利点は料金、選択肢、データ管理
書簡が強調する利点は3つです。第一に、すべての仕事で高価な最上位AIを使わず、仕事ごとに適した大きさと費用のAIを選べること。第二に、特定の1社だけに依存せず、クラウドや半導体、運用会社を変えやすくなること。第三に、機密データを外部のAI提供会社へ送らず、自社が管理する環境で処理できることです。
これは「無料になる」という意味ではありません。自社運用にはサーバー、電力、設定、監視、更新、安全対策の費用がかかります。利用量が少ない会社では、使った分だけ払う外部サービスの方が安い場合もあります。反対に、同じ定型処理を大量に行う会社や、データを社外へ出せない会社では、自社運用が有力になる可能性があります。
Open weights let every organization match the right model to the right job at the right cost, reserving frontier-scale capability for genuine frontier problems.
出典:NVIDIA掲載の共同書簡PDF
「公開すれば安全」と決まったわけではない
書簡は、外部の研究者や企業がAIを検査できるため、弱点の発見や防御策の改善につながると主張しています。同時に、公開された重みは元の開発会社が回収しにくく、改変版の追跡や取り消しが難しいという固有の危険も認めています。
ここは利用企業が誤解してはいけません。中身を調べられることと、安全が自動的に保証されることは別です。誰でも入手できるAIは、防御側だけでなく悪用する側も調整できます。また、利用企業が古い版を放置したり、出所不明の改変版を使ったり、社内システムへ広い権限を与えたりすれば、公開型でも事故は起こります。
会社で採用する場合は、入手元と利用許諾、ファイルの改ざん確認、更新担当者、入力データの保存場所、外部通信、操作できる範囲、問題発生時の停止方法を決める必要があります。安全の責任がAI提供会社から自社へ移る部分も、費用比較に含めるべきです。
米国政府の既存方針とは同じ方向
米国政府が2025年7月に公表した「America's AI Action Plan」は、オープンソースとオープンウェイトAIを奨励し、中小企業による採用を後押しする方針をすでに示しています。機密データを閉じたAIの提供会社へ送れない企業や政府に利点があるという説明も、今回の書簡と共通しています。
Led by DOC through the National Telecommunications and Information Administration (NTIA), convene stakeholders to help drive adoption of open-source and open-weight models by small and medium-sized businesses.
出典:The White House「America's AI Action Plan」
ただし、今回の書簡は法律や政府決定ではなく、企業・団体から政策担当者への要望です。これだけで規制がなくなったり、日本での利用条件が変わったりしたわけではありません。今後の法律、輸出規制、各モデルの利用許諾は別に確認する必要があります。
AI業界の利害も見ておく必要がある
署名団体の立場は同じではありません。AIモデルを公開する会社だけでなく、半導体、クラウド、サーバー、セキュリティ、開発支援、投資を事業にする団体が含まれています。オープンウェイトAIが広がると、利用者の選択肢が増える一方、これらの製品やサービスへの需要も増えるため、書簡には署名側の事業上の利益もあります。
AI深報は、署名数の多さだけで安全性や政策の正しさが証明されたとは見ません。重要なのは、閉じたAIだけに集中する危険と、公開後に制御しにくい危険の両方を認め、用途ごとに管理方法を変えることです。
会社が今確認したい5項目
今回の書簡を受けて、すぐに自社運用へ切り替える必要はありません。まず、①外部へ送れないデータがあるか、②処理量を含む総費用、③必要な精度と更新頻度、④社内で安全管理できる人、⑤契約先を変えられる設計になっているか、の5項目を確認します。
比較では、外部サービスと自社運用で同じ10〜30件の実務を処理し、AI利用料だけでなく、サーバー費、設定時間、人の確認時間、失敗時の損失まで記録します。自社運用は「安い版」、外部サービスは「安全な版」と決めつけず、仕事とデータの性質で分けるのが現実的です。
注意点と限界
署名数と追加団体は、2026年7月26日にAI深報がMicrosoftのWeb版とNVIDIA版PDFを照合した結果です。Webページは今後も更新される可能性があり、追加日時はページ上で確認できません。NVIDIA版PDFとの差だけで、各団体がいつ、どの経緯で署名したかまでは断定できません。
また、書簡が述べる料金低下、安全性、競争促進は署名団体の主張です。具体的な値下げ幅、事故率、導入効果を示す共通の実測値は書簡にありません。AI深報も個別モデルの性能試験や費用試算を行っていないため、各社は自社の仕事と運用条件で比較する必要があります。
公式2資料の署名一覧を比べると、参加団体は35から50へ増えています。ただし、団体数だけでは利用時の費用や安全性まで判断できないため、企業は用途ごとの利点、費用、管理責任を分けて確認する必要があります。
※ 本記事は公開時点の一次情報にもとづいています。最新の状況は出典をご確認ください。
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監修者:水間 雄紀
株式会社AIMA 代表取締役
1986年和歌山県生まれ、近畿大学卒。金融機関、経営コンサルティング会社を経て、2018年にコンテンツ制作の専門会社である株式会社circlizeを創業。2024年、ラグザス株式会社に事業譲渡。現在は株式会社AIMAにてAI×マーケティング事業に従事し、株式会社ラグザス・クリエイトでコンテンツの品質管理責任者を務める。
監修者・運営会社について