ChatGPTがパソコン操作を記憶 会社でオンにする前の5つの確認

- Mac版ChatGPTが、許可したアプリやWebサイトでのクリック、入力、切り替えを記憶できるようになった
- 画面録画ではないが、作られた記憶は暗号化されない文章ファイルとしてMacに残り、悪意ある指示を拾う危険もある
- 会社では全員一斉にオンにせず、対象者・対象アプリ・削除方法・同意・学習設定を決めてから少人数で試したい
昨日の仕事を説明し直さず、ChatGPTに続きから頼める
OpenAIは2026年8月13日、Mac版ChatGPTに「Computer History」を追加しました。日本語にすれば「パソコンの操作履歴」です。許可したアプリやWebサイトで何をしていたかを時系列の記憶に変え、ChatGPTとCodexが後の会話や作業で参照します。
ChatGPTは、パソコン上のアプリやWebサイトでの活動を記憶できるようになった。デスクトップアプリのComputer Historyにより、今後のやり取りはより個人に合い、説明の繰り返しが少なくなる。
出典:OpenAI公式X(編集部訳)
たとえば「休憩前に何をしていたか」「午前中に見た提案書はどこか」「昨日の仕事を朝会向けにまとめて」と聞けます。繰り返している作業を見つけると、同じ手順を再利用するスキルや自動化の候補も示します。単なる会話の記憶から、実際の仕事の流れを覚える機能へ踏み込んだ形です。
対象はMac版のPro、Business、Enterprise
Computer Historyは初期状態でオフです。現時点の対象はmacOSのChatGPTデスクトップアプリを使うPro、Business、Enterpriseで、通常のAPIやAmazon Bedrockからは使えません。欧州経済領域、英国、スイスも初回提供の対象外です。日本で利用できる条件は満たしますが、Windows、Linux、Web版、Free、Plusへの提供は公式文書で確認できませんでした。
BusinessとEnterpriseでは管理者が役割ごとに利用を許可し、その後に各社員が自分でオンにします。管理者が許可しても自動で記録は始まりません。通常のChatGPTの「Memories」も有効である必要があります。
| 確認項目 | 現在の条件 | 会社での判断 |
|---|---|---|
| 端末 | Mac版デスクトップアプリ | Windows・Linux利用者は対象外として管理 |
| 契約 | Pro、Business、Enterprise | 業務利用は会社契約を優先 |
| 開始 | 初期設定はオフ | 管理者許可と本人の同意を分ける |
| 地域 | EEA、英国、スイスは対象外 | 海外拠点ごとに提供可否を確認 |
画面録画ではなく、クリックや入力を文章へ変える
この機能は、以前の研究版「Chronicle」の名前を変えただけではありません。Chronicleは画面画像を使いましたが、Computer Historyは許可された場所で起きた操作を記録します。対象になり得るのはクリック、文字入力、キーボード操作、アプリの切り替え、macOSのアクセシビリティ機能が渡す文脈です。画面の画像、動画、マイク、パソコンの音声、ブラウザのプライベートモードは記録しません。
Computer Historyは、許可されたアプリとWebサイトから操作イベントの流れを作る。イベントにはクリック、入力、キーボードショートカット、アプリの切り替え、macOSのアクセシビリティ機能が公開する文脈が含まれることがある。
出典:OpenAI「Computer History」(編集部訳)
「画面録画ではない」から安全だと決めつけるのは早計です。入力した文章や開いていたアプリの文脈には、顧客名、社内会議、未公開資料、健康・金融情報が含まれ得ます。誰と何を話したかも操作の流れに入るため、OpenAIは他人との通信中は事前に明確な同意を得るか、機能を止めるよう案内しています。
データはMac、OpenAI、Macの順に動く
公式文書を読むと、データの流れは5段階に分けられます。操作イベントはMacに一時保存され、最大48時間で削除されます。次に一時的なCodex作業がイベントをOpenAIのサーバーで要約し、記憶を文章ファイルとしてMacへ戻します。OpenAIは一時イベントを処理後に保持せず、学習にも使わないと説明していますが、法律上必要な場合は例外です。
| 段階 | 起きること | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| 収集 | 許可したアプリ・Webの操作を記録 | 入力内容や会話の文脈を含み得る |
| 一時保存 | イベントをMacに最大48時間保存 | 止めても既存履歴は別に削除が必要 |
| 要約 | OpenAIのサーバーで記憶に変換 | 完全な端末内処理ではない |
| 記憶 | MacへMarkdown形式で保存 | 削除するまで残る |
| 再利用 | 後の会話やCodex作業へ渡す | チャットの学習設定が別に効く |
最も重要なのは、生成された記憶が暗号化されない普通の文章ファイルである点です。Macの同じ利用者権限で動く別のソフトから読める可能性があり、記憶は利用者が削除するまで残ります。また、後の会話で記憶を使った内容は、個人用契約で学習を許可していればモデル改善へ使われる場合があります。「イベントは学習しない」という説明と、記憶を使った後の会話の設定は別物です。
会社で試すなら5つを先に決める
全社導入より先に、2〜5人の試験用グループを作ります。対象は業務用Macと会社のBusinessまたはEnterpriseアカウントに限定し、個人のProアカウントへ仕事の履歴を混ぜないほうが管理しやすくなります。
- 対象者:管理者、本人、情報管理担当の3者が試験範囲を確認する
- 対象アプリ:「除外一覧」ではなく、架空データを使うアプリだけの「許可一覧」から始める
- 停止と削除:メニューバーから止め、10分、1時間、1日、全履歴を消す手順を実演する
- 他人の同意:会議、メール、チャット、顧客対応は原則除外し、参加者の明確な同意なしに記録しない
- 学習設定:管理者許可、本人のオン、Memories、ChatGPTのデータ利用設定を別々に確認する
試験では「昨日の作業をまとめる」便利さだけでなく、履歴画面とMac上の記憶ファイルに何が残ったかを毎日確認します。顧客名や秘密情報が1件でも混ざったら対象を広げず、許可するアプリとWebサイトを絞り直します。OpenAIは悪意あるWebページの指示をChatGPTやCodexが拾う「プロンプトインジェクション」の危険も明記しているため、閲覧範囲を広げるほど便利になるとは限りません。
編集部の読み
OpenAIが狙っているのは、利用者が毎回説明するチャットから、仕事の流れを先回りして理解する助手への転換です。企業への示唆は、AIへ渡す情報を会話欄だけで管理する社内規程では足りず、パソコン上の操作履歴とローカル記憶も情報資産として扱う必要が出たことです。だから導入判断は「画面録画か否か」ではなく、誰のどの操作が、どこで要約され、いつ消えるかで行うべきです。この読みが外れるのは、管理者が端末ごとの記録範囲、保存期間、暗号化、監査ログを一括管理できる仕組みが整い、個人任せの運用が不要になった場合です。
注意点と限界
編集部はComputer Historyを実機でオンにせず、記録の精度、対象アプリごとの差、削除後のファイル消去、トークン消費を再検証していません。OpenAIは処理後の一時イベントを保持しないと説明していますが、要約時に送られる項目の完全な一覧と暗号化の詳細は公開文書から確認できませんでした。Windows、Linux、Web版、Free、Plusへの提供時期、EEA・英国・スイスでの開始日も未発表です。
※ 本記事は公開時点の一次情報にもとづいています。最新の状況は出典をご確認ください。
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監修者:水間 雄紀
株式会社AIMA 代表取締役
1986年和歌山県生まれ、近畿大学卒。金融機関、経営コンサルティング会社を経て、2018年にコンテンツ制作の専門会社である株式会社circlizeを創業。2024年、ラグザス株式会社に事業譲渡。現在は株式会社AIMAにてAI×マーケティング事業に従事し、株式会社ラグザス・クリエイトでコンテンツの品質管理責任者を務める。
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